著者
長尾 祐樹
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
pp.2018-0012, (Released:2018-07-10)
参考文献数
65
被引用文献数
1

高プロトン伝導性高分子には,エネルギー変換,センサー,触媒,アクチュエータなどさまざまな用途がある.含水により高プロトン伝導性を示す高分子の分子設計は,強酸性基を骨格に導入し,含水により親疎水の相分離構造を形成させ,親水チャネルを使ってプロトンを輸送させることに基づいている.Nafionのような高プロトン伝導性高分子は,相分離構造を示すものの,長距離秩序をもたないために,構造とプロトン伝導性の相関の議論は容易ではなかった.筆者らの研究グループは基板界面を利用して高分子を配向させ,分子配向がプロトン伝導性に与える影響を調べてきた.本報では,Nafionの薄膜化によるプロトン伝導度の低下,アミドオリゴマー薄膜のプロトン伝導度の基板依存性,ポリペプチド薄膜の分子配向によるプロトン伝導度の向上,およびスルホン化ポリイミド薄膜が有するリオトロピック液晶性による組織構造と高プロトン伝導性の相関を述べる.