著者
長岡 良治
出版者
鹿児島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

ADHD児(3名)の注意力や集中力の改善にどのような運動が効果的かを調べるために、閉眼歩行、無酸素運動(100m走)、有酸素運動実施前後に計算テスト、CRT(選択反応時間)測定、ペグボード検査を実施した。ペグボード検査では有酸素運動後と閉眼歩行後に、計算テストでは有酸素運動後に、CRTは有酸素運動後や閉眼歩行後に時間が短縮すう傾向にあることから、有酸素運動や閉眼歩行は注意力や集中力の改善に良い効果をもたらすことが示唆された。無酸素運動は運動後の呼吸の乱れにより一般に集中力は低下するが、ADHD児の中には良くなる子もいた。ADHD児には、動作のぎこちなさや不器用,さがみられるため、筋緊張の調節を司る大脳基底核に発達障害があるのではないかと考え、感覚統合運動を取り入れた8種類の身体運動を5名に3ヶ月間実施した。8種類のうち閉眼歩行と手拍子は毎日行わせ、的当て、ビーンズバッグ、風船バレー、ボール運動、ビーズ通しおよび後出しじゃんけんは週に1回行わせた。注意力・集中力をみるためにAPP検査、計算テスト、タッピング、ペグボード、CRT測定を行った6トレーニング後はAPP検査で問題のあった自己統制、動作の安定の項目が改善された。タッピングとペグボードの検査項目では改善が見られなかったが計算テストとCRTに改善の傾向がみられたことから、今回負荷した運動課題が脳の処理機能に有効に作用したと推察された。