著者
長岡 輝之 江原 義弘 小林 量作 関根 裕之 大西 秀明
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.299-304, 2009-10-20

【目的】本研究の目的は,滑り易い床面での歩行で,滑らないようにどのような身体機能を発揮しているのか,そのメカニズムを明らかにすることである。【方法】健常成人男性20名を対象とした。赤外線カメラ9台を含む三次元動作解析装置と床反力計を使用し,滑り難い床面での歩行および滑り易い床面での歩行を計測した。得られたデータより,股関節モーメントと床反力の作用線の関係を検討した。【結果】滑り易い床面での歩行では,床反力の推進力と制動力が滑り難い床面に比べ有意に小さくなり,逆に股関節の屈曲及び伸展モーメントのピークは有意に大きくなっていた。また,ピークは両側支持期であり,前方支持脚の伸展モーメント,後方支持脚の屈曲モーメントが増加していた。【結論】左右の下肢で前後に挟み込むようにすることで股関節モーメントを大きく発揮させていた。その結果床反力作用線が股関節軸から離れ,より鉛直に近く保持する戦略が用いられ,推進力と制動力を減少させていることが今回の研究で確認できた。