著者
与儀 喜邦 佐藤 新五 立野 進 東 秀史 郡山 和夫 長田 幸夫 瀬戸口 敏明
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2928-2932, 1994-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

エタノール注入療法が有効であった巨大腎嚢胞の1例を報告する. 症例は71歳,男性.腹部膨満感を主訴として来院した.腹部超音波検査にて右上腹部に嚢胞性腫瘤を認めた.腹部CT検査では右腎実質を左方に圧排する巨大な嚢胞がみられ,腎孟造影で右腎孟は左方へ強く偏位していた.腎動脈造影では右腎動脈は左前方へ圧排されていた.以上から巨大な右腎嚢胞と診断した.超音波ガイド下に右腎嚢胞を穿刺し3,250mlの内容液を吸引した後,嚢胞造影を行い嚢胞外への漏出がないことを確認した.造影剤回収後に95%エタノール500mlを20分間注入した.同時に内容液330mlの左腎嚢胞に対しても95%エタノール100mlを注入し治療した.この患者は他に両腎に計2個の小嚢胞があった. 術後,両側腎嚢胞は縮小した.特に右腎の巨大嚢胞は径5cmと著明に縮小し, 3年間の経過観察でも再発は認められなかったが他病死した.