著者
浅田 正彦 長田 穣 深澤 圭太 落合 啓二
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.53-72, 2014-06-30 (Released:2014-06-30)
参考文献数
54
被引用文献数
5

千葉県房総半島に生息するキョン(Muntiacus reevesi)の2006年度~2011年度末時点における59管理ユニットの個体数について,糞粒法,区画法の調査結果およびユニット別,年別捕獲数を用いて状態空間モデルを構築し,階層ベイズ推定法で推定した.推定の結果,2011年度末の合計個体数は中央値19,826頭(95%信用区間:14,542~26,422頭)となった.従来の糞粒区画法と出生数捕獲数法による総個体数推定値は,やや過少評価していた.ベイズ法を利用することで,より推定幅が狭く精度の高い推定が可能となった.個体群増加率は平均1.294であった.野外で捕獲された個体の性齢構成と妊娠率から,年1回の繁殖を仮定すると,個体群増加率は1.356ないし1.407となることから,無視できない程度に大きい死亡率が個体群動態に寄与していることが推測された.