著者
生駒 貴弘 岡田 和也 長谷川 直実 佐々木 渉 平井 愼二
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.140, 2017 (Released:2018-10-31)

本研究は,物質使用障害に対する条件反射制御法の効果について検証したものである. この技法は,標的行動を司る反射連鎖を制御することを目的とするが,これまでの実践を通じて, 物質使用障害者の通院治療を継続させる効果,及びその再犯を防止する効果があると推測される. その根拠となる仮説として,第1に,この技法は,具体的な作業をステージの進行に従って積み重ね る構成であるため,通院目的と課題が明確であり,また通院を重ねるごとに効果が実感されるため, 通院を継続する動機づけが高められる.第2に,この技法を用いることにより,物質使用の引き金とな る刺激に遭遇した際の反射連鎖の作動性が減衰するとともに,物質使用に至る行動を司る反射連鎖を 止めるための人工的な刺激(動作と文言)を形成し活用することで、規制薬物再使用の危険性を低下 させることができる. 仮説の検証は,2種類の実態調査を行い,その結果について統計的に検討を行った. その結果,この技法は,物質使用障害者の通院治療を継続させる効果,及びその再犯を防止する効 果があることが示唆されたが,限定的な条件に基づく分析であることから,更なる実証研究の集積が 必要と思われる.