著者
田沢 純一 長谷川 怜思 長谷川 美行
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.269-285, 2008-06-15
参考文献数
116
被引用文献数
5

水越層は九州中央部の水越地域に分布し,黒色頁岩と薄衣式礫岩で特徴づけられる上部ペルム系(Lopingian)で,全層厚は1,690mに及ぶ.南部北上帯の登米層,飛騨外縁帯の森部層上部,黒瀬川帯の球磨層と層相が似ている.水越層のフズリナ類フォーナはLepidolinaを含み,NeoschwagerinaとYabeinaを欠くことで,南部北上帯・飛騨外縁帯のものに類似するが,黒瀬川帯のものとは異なる.腕足類フォーナはボレアル型-テチス型混合フォーナであり,飛騨外縁帯,南部北上帯,プリモリエ南部の中〜後期ペルム紀腕足類フォーナに種属構成が似ている.以上のことから,水越層は飛騨外縁帯のペルム系の南西延長部に相当し,南部北上テレーンの構成要素であると考えられる.また,ペルム紀中〜後期に水越地域はより北方の飛騨外縁帯と南方の南部北上帯にはさまれてその中間に位置し,これら全体は北中国東縁に存在したと考えられる.