著者
長野 誠治
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.130-188, 2016

<p>(1) 仕事について</p><p> 男性の場合、50代後半で正社員の割合が激減する一方、無職や自営の割合が増加する。女性の場合、年齢階層が上がるにつれて非正規の割合が低下するものの、男性に比べると非正規の割合が高い。また、男性は専門職が多い一方、女性は事務的な仕事が圧倒的に多い。現在の仕事の継続期間は男女平均で12年4ヵ月。仕事の悩みのトップは「収入が少ない」であり、回答者の半数がそのように回答している。さらに、6割以上が定年制はあると回答。そして、「定年よりも前に適当な仕事があれば転職したい」という回答が男女全体では1 番多い。退職意向年齢は男女平均で63.7歳、男性の方が女性よりも2歳以上遅い。これまでの職歴では「最初の仕事と現在は異なる」が1番多く、過半数を占める。離職経験のある人の初職は男女ともに「正社員」が75%と1番多い。 ただし、初職が非正規だった人は男女ともに現在40代前半層が比較的多い。初職が非正規であった人で現在も非正規である人の割合が、現在は正社員である人の割合を大きく上回る。転職の回数は平均4回。現在、仕事についていない理由は「希望する仕事がない」が1番多い。女性では「親等の介護で手が離せない」が男性に比べて多い。</p><p>(2) 家族・家計について</p><p> 世帯人数は本人のみの独居が1番多く40%を占める。同居相手は「母親」がトップ。 生計維持の中心者は「本人」「父親」の順。女性のみに限定すると、生計維持の中心者は「父親」が第1位。世帯全体の年間収入額は「200万円以上300万円未満」が1番多い。世帯の収入源は「自分の仕事の収入」がトップで8割弱、次いで「親の年金収入」が40%強。本人の仕事の収入は平均275万円。女性の方が男性よりも60万円程度低い。 「厚生年金に加入」が40%、「国民年金保険料を全額払っている」が14.4%。社会保険の加入状況は「国民健康保険」が55.5%でトップ、次いで「健康保険・共済組合(本人)」が40.8%。1ヵ月の生活費は「10万円未満」が25.8%でトップ。住宅ローンの保有割合は7%であり、平均残高は1,400万円。住宅ローン以外のローンは男性の方が女性よりも保有割合が高い。老後のための資産形成手段は「預貯金」が66.5%でトップ、一方で老後の資産形成を「何もしていない」が全体で24.5%を占め、女性、特に非正規女性の場合、その割合が高い。</p><p>(3) 住まいについて</p><p> 現在の住まいは「親の持ち家」「賃貸住宅」「自分の持ち家」の順。家賃は月額平均5万2,000円。持ち家の築年数の平均は30年。老後の住まいと同居意向は、「現在の家に住み続ける」が6割、「1人で暮らす」が46%であり、それぞれ第1位。</p><p>(4) 今の生活について</p><p> 健康状態は「まあ健康」が43%、充実した気持ちを感じる時は「趣味やスポーツに熱中している時」が26%で、それぞれトップ。病気の時の看護や家事・介護、あるいは経済的援助に関して頼りにできる人は現在「特にいない」が、ほぼ過半数を占める。老後においては、その割合がさらに高まる。生活の満足度は、仕事の内容、職場の人間関係、趣味やスポーツ活動、家族、友人等に関しては「まあ満足」がトップ。一方で、収入や資産・貯蓄といった経済面については「やや不満」が第1位。今の生活については、生活全般、自分の健康、生活費、面倒をみてくれる人がいないこと、雇用の不安定さ、のいずれも「少し不安に感じる」がトップ。老後についても多くの項目で「少し不安に感じる」が第1位。ただし、住宅、趣味や友人との交際などでは「あまり不安でない」がトップ。結婚の意向については、「結婚するつもりはない」が50%でトップだが、僅差で「適当な人がいたら結婚したい」。過去または現在の介護経験では17%が「ある」と回答し、その対象は「母親」が最も多く、「同居家族が介護した(している)」という回答が比較的多い。将来、家族が介護状態になった場合は「在宅介護を利用」が20%であり、第1位。</p><p>(5) 老後の生活について</p><p> 老後の生活設計を考え始める時期は「まだ考えていない」が62%でトップ。老後に最低限の生活を営むために必要な1ヵ月の生活費は「10万円以上15万円未満」が33%、ゆとりある生活を営むのに必要な生活費は「20万円以上25万円未満」が27%であり、それぞれトップ。老後における収入源の2本柱は「公的年金」と「仕事による収入」。将来の公的年金の受取見込み額(月額)は平均9万5,000円。将来、自分が介護状態になった時の対処方法は「在宅介護」が34%でトップ。</p>