- 著者
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東海 達大
桐澤 聡邦
開田 達弥
- 出版者
- 富山救急医療学会
- 雑誌
- 富山救急医療学会 (ISSN:21854424)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.1, 2019
【背景】<br> 昨今の高齢化社会の影響で、高齢者福祉施設からの救急要請件数が増加しており、さらに現場滞在時間が全国平均を超えている消防本部が多く見受けられる。また、平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書において、福祉施設と救急隊間での情報収集シートなどの活用促進が検討された。<br> 当本部でも目撃した施設職員が不在であったり、また聞きのため詳細がわからなかったりして患者情報の聴取に時間がかかる等、現場滞在時間が延長しているのが現状である。<br>【目的】<br> 「情報伝達カード」を利用することで、円滑に情報提供を受けることができる体制を構築し、現場滞在時間等の短縮を図る。<br>【対象と方法】<br> 市内28箇所の福祉施設に、救急隊が必要とする項目を一覧にした「情報伝達カード」を事前に配布した。救急隊到着時の救急隊への提供の有無を調査し、提供があることで現場滞在時間等の短縮につながっているかどうかを確認する。<br>【結果】<br> 平成30年、当救急隊出場件数1259件中、福祉施設へは77件出場している。うち、カードの提供ありは39件、なしは38件だった。現場滞在時間、接触から連絡(収容依頼)開始、車内収容から連絡開始の何れも、カードの提供があることで若干の時間短縮はみられたが、有意差はなかった。<br>【考察】<br> まだまだ施設職員に浸透しておらず、使用されなかった事案が約半数あった。救急通報受信時またはプレアライバルコールにて、カードの提供を依頼することで使用回数を増やしたい。また、今後は福祉施設と連携訓練等を実施し、必要な項目の共通認識を持つとともに、施設側の意見も取り入れていきたいと考えている。