著者
半藤 保 間部 佑子 柳瀬 徹 倉林 工
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-7, 2008-03-10

2001年1月から2006年8月までの5年8ヶ月間の新潟市民病院産婦人科における診療録の後方視的調査から以下の点を明らかにした。1.Rh血液型不適合妊娠は妊産婦2,988例中29例(0.97%)で、このうちRhD単独陰性は14例(0.47%)、RhDと他のRh因子との複合陰性3例(0.10%)、合わせてRhD陰性は17例(0.57%)であった。2.臨床的に問題となったのは、RhD,RhC陰性例にはなく、RhE陰性9例中の5例であった。これらの5例はいずれも妊娠中に抗体価の上昇を認めた。また、その中から生下時、児が直接クームステスト陽性を示したものが3例あった。3.直接クームステスト陽性3例はいずれも光線療法、ならびに1例には妊娠母体への抗Rhヒト免疫グロブリン投与がなされたが、交換輸血施行例はなかった。4.妊娠中、初めて抗体価の上昇を認めたのは、1例は妊娠18週、他の1例は妊娠21週であったが、いずれも既往分娩歴があり、それのないものでは妊娠30週であった。5.今回のシリーズに高度の新生児溶血性疾患は認められなかったが、文献的には経妊回数の増加に伴って抗体価上昇を示す割合が高くなり、また、輸血は勿論既往妊娠歴が全くなくても新生児溶血性疾患をきたすことがあることを念頭に、Rh血液型不適合妊娠に対処しなければならない。