著者
関 孝一 伊藤 芳晴 西 泰雄 猪阪 優子
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.385-391, 1993
被引用文献数
19 3

IFN治療中のC型慢性活動性肝炎症例のなかに,視力低下や飛蚊症などの自覚症状を訴え,眼底出血の存在を指摘される3症例が発現した.このため,IFN治療中20例と,IFN治療終了後14例,34例全例に眼底検査が指示され,IFN治療中の残る17例から,自覚症状を欠く眼底出血例4例があらたに発見された.眼底出血例7例が詳細に検討され,眼底出血がIFNの副反応の1つであることが推測された.乳頭部周囲に位置する表層性出血と軟性白斑が共通する特徴的所見である.出血例7例と非出血例27例が対比検討され,眼底出血発現の背景因子は糖尿病の合併,危険因子はIFN治療開始後の血小板減少,血小板減少率,triglyceride高値,がT検定で有意(p<0.05)と結論された.眼底出血例は視力障害など重篤な眼症状を伴なわず,又IFN治療中に眼底所見が改善する症例が3例あり,IFNは慎重な観察の下に治療継続が可能である.他方,自覚症状を欠く眼底出血例が4例あり,IFN治療例は全例に眼底検査が必要と考えられる.