著者
関 智彦
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.64, pp.125-142, 2021-01-20 (Released:2021-02-22)
参考文献数
21

本論は、スペインの思想史家であるマルセリーノ・メネンデス・ペラーヨ(Marcelino Menéndez Pelayo, 1856–1912)が、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、スペインのイスラーム思想史学に対して行った貢献とその背景を検討するものである。第一に、当時の西欧におけるスペインのイスラーム学の学風を検討する。第二に、ペラーヨと当時のイスラーム学者の往復書簡を分析し、両者の接点や影響関係を考察する。第三に、ペラーヨの歴史観を強く反映する著書である『スペインの学術』と『スペイン異端者史』におけるイスラーム思想史関連の叙述を分析し、当分野への貢献の背景にある、ペラーヨ自身のイスラーム思想史学における関心を指摘する。一連の考察により、スペインのイスラーム思想史学に対するペラーヨの貢献の背景には、19世紀後半におけるスコラ哲学の議論に対し、スペインから独創的な貢献を試みる彼自身の関心があったと結論付けた。