著者
水越 美奈 北口 めぐみ 関口 歩 中村 透
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.44-47, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10

過去のいくつかの報告では、犬種だけでなく雌雄間においても行動特性の違いが見られると報告されている。このような行動特性の違いは飼育上で発現する問題行動にも差がもたらされるのではないかと考え、比較的飼育方法が平均化している盲導犬候補の子犬に対して、さらに犬種を1つに固定することにより犬種差による行動の違いを排除したうえで生後1 歳齢までの問題行動を調査したところ、ほとんどの特性に雌雄による違いは見られなかった。今までの調査では対象となる個体の不妊手術の有無は考慮されていなかったが、今回調査したオスでは全てが性成熟前に不妊手術が行われていた。つまり性成熟前の不妊去勢は性的な機能をなくすだけでなく、行動特性の性差を縮めることで、望ましい特性を強調することができることが示唆された。
著者
水越 美奈 及川 友恵 北口 めぐみ 細井 淳子 中村 有佳 関口 歩 中村 透
出版者
Japanese Society of Service Dog Research
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-22, 2009

盲導犬では子犬期の約1 年間、子犬飼育ボランティア(以下、PW )の家庭で育てられる。PW に対してより適切な指導を行うことを目的に、経験あるPW と新規PW の間で子犬の飼育初期におこる問題の相違について調査を行った。対象はPW 経験がある76 家族と新規PW 102 家族、計178家族とし、3 ヶ月齢時に「排泄の失敗」、「飛びつき」、「吠え」、「拾い食い」、「散歩時の引っ張り」の有無について二者択一、その他の問題については自由記述でアンケートを行った。PW経験者が抱える平均問題数は3 . 0 件(中央値3、最頻値0)、PW 未経験者では4 . 2 件(中央値4、最頻値5)であった( p< 0 . 01 )。また「排泄の失敗」、「飛びつき」、「破壊行動」、「甘噛み」では明らかに未経験者での出現率が高い( p< 0 . 01 )ことがわかった。出現率に差が認められた項目では以前のPW 経験が役立ったことが示唆された。つまり、これらの項目では以前のしつけの方法が他の犬にも応用できたと考えられた。「吠え」や「拾い食い」などでは出現率の差はほとんど無く、これらの問題ではその個体に合った具体的な指導が必要であると考えられた。