著者
水越 美奈 下重 貞一
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.60-63, 2007-07-01 (Released:2007-10-12)
参考文献数
6

盲導犬は酷使されるので寿命が短い、という話を聞くことがあるが、この話は科学的な根拠はない。今回、日本に9つある盲導犬育成施設のうち8つの施設より、盲導犬として実働していた犬の447例の死亡年齢を調査する機会を得ることができた。その結果、これらの平均寿命は12歳11カ月であり、死亡年齢が15歳を超える割合は28%だった。そのうちラブラドールレトリバーの平均は13歳3カ月、ゴールデンレトリバーでは11歳5カ月であった。死亡年代別の平均死亡年齢は、80年代で11歳、90年代で12歳3カ月、2000年代では13歳7カ月であり、いずれも家庭犬の平均寿命についての調査に比較して高いことが明らかになった。
著者
山田 大
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.36-40, 2008 (Released:2008-09-18)
参考文献数
6

『身体障害者補助犬法の衛生確保のための健康管理ガイドライン』の中では、補助犬の整毛について定めている。しかし犬の被毛・抜け毛に関する研究はあまり行われていない。本研究では犬の抜け落ちる毛について3 つの実験を行った。実験に使う犬の毛の量は多量であるため、被毛0.03g あたりの本数を数え、1gあたりの本数を推測した。その結果、犬の被毛1 gあたりの本数は約32700 本であった。また犬に服を着せた状態と、服を着せていない状態で抜ける毛の本数を比較した。その結果、犬に服を着せた状態で150本程度、服を着せていない状態では230 本程度の被毛が抜け落ちることがわかった。これより、着衣によって通常の4 割近く被毛が落ちるのを防ぐことができると言える。さらに、掃除方法による抜け毛の回収率を比較した。その結果、床や畳の場合は手で払うだけでほとんどの抜け毛を回収できることや、粘着カーペットクリーナーと掃除機はどのような素材でも回収率が高いことなどが確認された。
著者
倉澤 悠維 三浦 靖史
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-34, 2019-10-01 (Released:2023-01-06)

目的:2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、訪日者を含む身体障害者補助犬(以下、補助犬)使用者の搭乗が想定される国内航空事業者の補助犬受け入れの取り組みの現状を把握し、課題を明らかにする。 方法:2018年1月に国内線を運航する航空会社15社(グループ)を対象とし、電話、メール、問い合わせフォームを用いて、各社の予約・問い合わせ窓口に聞き取り調査を実施した。質問項目は、「補助犬搭乗時の緊急時の誘導方法」、「社内マニュアルへの補助犬への対応に関する記載の有無」、「補助犬搭乗時の他の乗客への配慮、周知」、「一便あたりの補助犬の頭数制限」「海外の渡航者からの補助犬に関する問い合わせの有無」の5点であった。 結果:11社(グループ)(73.3%)から回答を得た。緊急時の誘導方法が補助犬搭乗時と非搭乗時で同様であったのは9社(81.8%)、マニュアルに補助犬への対応が含まれていたのは10社(90.9%)、マニュアル等に補助犬搭乗時の他の乗客への配慮や周知について記載があったのは9社(81.8%)であった。1機当たりの補助犬の頭数制限がなかったのは9社(81.8%)、海外渡航者からの問い合わせ履歴があったのは3社(27.3%)であった。 考察:約9割の会社が補助犬に対してマニュアルを用いて対応しており、補助犬に関するマニュアルの整備と利用が一般化していると考えられたが、会社により対応の詳細は異なる場合があった。 結論:補助犬への対応は多くの国内航空事業者で類似しているが、詳細は異なる場合があることから、予め、自社の対応を補助犬使用者に分かり易く提示しておくことが望ましいと考えられた。
著者
水越 美奈 勝瀬 裕美
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.17-21, 2014

<p> 身体障害者補助犬法では公共施設などの不特定多数の人が利用する場所への補助犬の受け入れが義務付けられているが、法律成立後も補助犬同伴の受け入れ拒否事例は報告されている。2012年 4月に補助犬法成立 10年を記念して盲導犬受け入れ拒否ゼロを目指した『渋谷ハチ公盲導犬パレード』が飲食店が立ち並ぶ渋谷駅周辺で行われた。このような啓発が飲食店に対して実際に効果があったのかどうかについて、渋谷駅前の飲食店と、啓発活動が行われていない池袋駅前の飲食店、各 50店舗に対して、比較調査を行った。調査の結果、パレード自体の認知も少なく、啓発が行われていない地域との差はほとんどなかった。また飲食店の補助犬法に対する認知は一般成人に対するものとほぼ変わりがなかった。飲食店に対して受け入れを啓発するには、盲導犬と共に街頭を歩き、受け入れを呼びかけるのみでは不十分であり、飲食店に焦点を絞った啓発を行うことが必要であると考えられた。</p>
著者
汪 斐然 徐 美朗 黒崎 弘平 小泉 聖一 小林 信一
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.28-33, 2012

<p>盲導犬同伴者の社会的な受入れを促進するためには、一般市民の受入れについての認知を拡大・深化させることは重要である。日中両国における盲導犬同伴者の社会的受入れに関する賛否やその要因など、市民意識の日中における相違を比較検討することを通して、日中における盲導犬事業発展の展望と課題を明らかにするため、中国と日本において一般市民を対象として、盲導犬同伴者についての意識調査を実施した。 その結果、一般市民は盲導犬に対する認知度では、日中とも高く、受け入れに良い姿勢をとっているが、飲食店側では、受け入れも可とする割合は低かった。また、盲導犬に関連する法律の認知度や盲導犬に関する知識については両国とも低い値であった。盲導犬同伴者の社会的な受入れを促進するためには、盲導犬事業の拡充、受け入れの促進法のための法律の整備とともに、一般市民に対する普及教育活動の充実が必要であると考える。</p>
著者
白田 剛 高柳 友子 水上 言 佐藤 江利子 石垣 千秋
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.38-45, 2007-07-01 (Released:2007-10-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1 3

目的 : 良質な介助犬を安定的に育成するためには、使用者の障害・疾患ごとにどのような費用がどの程度発生するのかの予測は重要である。本研究は、介助犬にかかる費用の使用者の障害・疾患別の推計を目的とする。方法 : 胸腰髄損傷、頚髄損傷、リウマチの3つの障害・疾患について、それぞれモデルケースを設定し、介助犬訓練事業者を対象としたアンケート調査および聞き取り調査をもとに、介助犬の一生にかかる費用項目を積算し、推計した。結果 : 各モデルケースごとの介助犬の一生にかかる費用は、胸腰髄損傷 : 約388万円~458万円、頚髄損傷 : 約411万円~481万円、リウマチ : 約470万円~539万円と推計された (非適性犬にかかった費用を含まない)。考察 : 障害・疾患によって費用が変化する要因としては、訓練期間の長期化、自助具の作成費用、継続指導の頻度の相違などがあげられる。今後、使用者のニーズごとの訓練メニューを整備していくことが重要になると考えられる。
著者
山田 大 多和田 悟 益野 健平
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.31-37, 2009 (Released:2011-02-10)

盲導犬として多く活躍するラブラドール・レトリーバーは、食べる事が好きな犬種である。視覚障害者と生活する盲導犬は、スーパーやレストランなどの食べ物を扱う公共の施設に出入りする機会がある。そのような場所で、盲導犬は人の食べ物に反応してはならない。訓練の段階で、食べ物に反応する犬がどの程度いるか調査をした。その中でも特に食べ物に対する反応が強い犬に対して、拒食訓練を行った。そして拒食訓練終了後にスーパーやレストランを利用して、模擬試験的にその犬の食べ物に対しての反応の変化を検証した。特定の食べ物や状況で勝手に人の食べ物を食べない事を教える事は可能であると考えられた。しかし一度人の食べ物の味を知り、興味を持ってしまった犬に対して、食べ物に全くの興味を持たない事を教える事は難しいと考えられた。盲導犬の候補となる子犬の頃から、人の食べ物に対して反応しない事を教えておく必要性がある事が示唆される。
著者
水越 美奈 北口 めぐみ 関口 歩 中村 透
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.44-47, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10

過去のいくつかの報告では、犬種だけでなく雌雄間においても行動特性の違いが見られると報告されている。このような行動特性の違いは飼育上で発現する問題行動にも差がもたらされるのではないかと考え、比較的飼育方法が平均化している盲導犬候補の子犬に対して、さらに犬種を1つに固定することにより犬種差による行動の違いを排除したうえで生後1 歳齢までの問題行動を調査したところ、ほとんどの特性に雌雄による違いは見られなかった。今までの調査では対象となる個体の不妊手術の有無は考慮されていなかったが、今回調査したオスでは全てが性成熟前に不妊手術が行われていた。つまり性成熟前の不妊去勢は性的な機能をなくすだけでなく、行動特性の性差を縮めることで、望ましい特性を強調することができることが示唆された。
著者
林 一彦 渡邉 佳恵 大村 雅 木場 秀夫
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.40-43, 2010

一般に、歯が折れたり欠けたりすることは破折と呼ばれている。犬においては、歯の破折は比較的しばしば認められる歯牙の実質欠損である。今回、著者らは2例の介助犬の歯の破折を治療する機会を得たので、その病態と治療方法について供覧する。また、その発生機序についても若干の考察を加えた。症例は2例とも上顎第4前臼歯が斜めに破折(斜折)しており、歯髄は露出していた。治療としては生活歯髄切断術と歯髄覆罩を行なったのちに光重合型コンポジットレジンで充填した。上顎第4前臼歯の斜折は硬いものをかんだ時に生ずる典型的な破折であるため、ストレス解消のために与えた硬いチュウトイが原因と推察された。したがって、今後は硬いチュウトイの代替となるストレス解消法を模索する必要があるのではないかと思われた。
著者
福井 良太
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-25, 2008 (Released:2008-09-18)
参考文献数
2
被引用文献数
4 7
著者
林 一彦 渡邉 佳恵 大村 雅 木場 秀夫
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.40-43, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
4

一般に、歯が折れたり欠けたりすることは破折と呼ばれている。犬においては、歯の破折は比較的しばしば認められる歯牙の実質欠損である。今回、著者らは2例の介助犬の歯の破折を治療する機会を得たので、その病態と治療方法について供覧する。また、その発生機序についても若干の考察を加えた。症例は2例とも上顎第4前臼歯が斜めに破折(斜折)しており、歯髄は露出していた。治療としては生活歯髄切断術と歯髄覆罩を行なったのちに光重合型コンポジットレジンで充填した。上顎第4前臼歯の斜折は硬いものをかんだ時に生ずる典型的な破折であるため、ストレス解消のために与えた硬いチュウトイが原因と推察された。したがって、今後は硬いチュウトイの代替となるストレス解消法を模索する必要があるのではないかと思われた。