著者
関口 覚
出版者
東京農業大学農業経済学会→食料・農業・農村経済学会 (121号-)
巻号頁・発行日
no.104, pp.27-41, 2007 (Released:2011-03-05)

群馬県藤岡市においては、水田灌漑用水不足対策として昭和初期国庫補助を受け県営事業により三名川を水源とする三名川貯水池を築造した。しかし、事業は計画から大きく乖離し、水田開拓が進むなどで水不足問題は一層深刻になっていた。戦後、三名川貯水池用水改良事業の補完と、更なる開田推進を目的として、昭和21年藤岡地域内を流れる鮎川に水源を求め国庫補助による県営「鮎川用水改良事業」に着手することとなった。当事業は、激しいインフレによる工事費の増嵩によって、改良区は金融機関からの借入金に依存する赤字経営に陥ると同時に、地元農民の負担金が過重になっていた。本稿は、国策食糧増産を至上命題とする社会経済体制下での土地改良事業と、インフレで工事費負担増に苦闘する財政不振の耕地整理組合(土地改良区に継続)の組織運営と地域農民の対応を実証的に考察した。