著者
関本 克良
出版者
天理大学学術研究委員会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.109-129, 2012-02

日本軍「慰安婦」問題は90年代に国連を中心にさかんに議論が行なわれた。その背景には旧ユーゴスラビア紛争での「強かん収容所」などに見られる武力紛争下での女性に対する性暴力が国際社会の重大な関心事であり,2000年の国連安全保障理事会決議1325の採択に至る経緯があった。武力紛争下の性暴力を断ち切るには犯罪行為の責任者を処罰する必要がある。元「慰安婦」による国内訴訟は全て申立てが棄却され原告敗訴で終った。判決の重大な焦点の一つに条約における個人請求権の解釈がある。日韓請求権協定によって不法行為に基づく被害者個人の損害賠償請求権が放棄されているのか否か,また国際法上個人の損害賠償請求権が存在するのか否か,本論はそうした視点から若干の考察を行なっている。