- 著者
-
関本 愉
松尾 浩一郎
片山 南海
岡本 美英子
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.118-126, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
- 参考文献数
- 40
目的:今回われわれは,胃がん周術期患者における術前の口腔機能低下症(Oral Hypofunction, OHF)の罹患率および栄養状態との関連性について検討した。 方法:2018年6月から2020年3月までに当科に周術期口腔管理目的で受診した胃がん患者214名を対象とした。OHFの7項目を測定し,3項目以上が診断基準に該当した場合にOHFと定義した。また,2019年7月よりMini Nutrition Assessment(MNA)を用いて栄養状態を評価した。70歳未満を若年群,70歳以上を高齢群とし,口腔機能の測定値とOHF罹患率が年齢とがんのStageによって差があるか検討した。また,OHFの有無とがんのStageでMNA値に差があるかについても検討した。 結果:舌圧,咬合力,舌口唇運動機能の各値は,高齢群で有意に低かった。また,舌圧はStageの進行とともに低下していた。OHF罹患率は,若年群では25%であったが,高齢群では39%と高齢群で高い傾向にあった。また,Stage 2以上の患者では,高齢群で低舌圧,咬合力低下,舌口唇運動機能低下の該当率が有意に高かった。MNA値はOHF罹患者で有意に低値を示していた。 結論:胃がん周術期患者では,がんの病期によらず,70歳以上の高齢者で口腔機能が低下していることが明らかになった。また,がんのStageの進行とともに舌圧が低下していることが示唆された。OHFは栄養状態とも関連している可能性があり,術後栄養管理の一環として,周術期における口腔機能への評価と介入が必要と考えられた。