著者
鵜沼 憲晴 関根 薫
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.111-123, 2007-02-28 (Released:2018-07-20)

従来の高齢者虐待研究によって明らかになった実態は,いまだ表層的である.本稿は,訪問介護員を対象にM県で行った高齢者虐待に関するアンケート調査の結果を踏まえ,虐待者のうちで最も多い「息子」に焦点をあてつつ,より具体的な実態把握および今後の支援策の提示を目的とする.なお,本稿での虐待類型は,通常の5類型に社会的虐待,医療的虐待,自虐を加えた8類型としている.まず虐待を行う「息子」の待徴として,(1)世話を行っている者と虐待者の一致率が高いこと,(2)被虐待者の要介護度に関わりなく虐待が発生すること,(3)性格・人格は「粗暴な性格」および「精神的未成熟・依存」の2タイプがある等を明らかにした.これを受け,今後の高齢者虐待防止システム構築や職員の介入・支援の視点として,以下のような課題を提起した.すなわち,担当ワーカーは,(1)粗暴もしくは依存的な性格・人格がうかがえる「息子」の実態把握と経過観察を待うこと,(2)経済的虐待を防止するうえでも高齢者の収入・預貯金の把握を行うこと,(3)親子関係の修復を目的とした長期的介入を行うこと等である.