- 著者
-
關野 康治
- 出版者
- 新島学園短期大学
- 雑誌
- 新島学園短期大学紀要 (ISSN:18802141)
- 巻号頁・発行日
- no.28, pp.43-70, 2008
政府見解は、「武力の行使」につき世界でもっとも厳格な解釈をとる。憲法第9条の「戦力」不保持及び交戦権の否認、そして何よりも自衛権のあり方について、わが国独自のユニークな解釈が行われているからだ。もとより、わが国も主権国家として固有の自衛権を保持しているから、自衛権の行使として「戦力ならざる自衛力」を行使できる。しかし、それは「自衛戦争」ではない。私が「わが国独自のユニークな解釈」というのはそういう点をとらえてのことだ。そういうユニークな解釈の結果、過去においてPKOという国際警察活動にさえ自衛隊を出し渋り、危険地帯に民間人や「文民」警察官を派遣して犠牲にした。今は、「武力の行使」と「武器の使用」を区別するなど、政府見解の維持に固執するあまり、国際的な基準とかけ離れた議論の迷宮にはいりこんでいく。戦争放棄の「理想」が、「現実」の国際社会の一員としての負担と責任を放棄する方便となってはいないか、そういう疑問を国際社会から向けられていると認識するのであれば、「つぎはぎの政府見解」を見直すべき時期にきているといえる。