著者
阪口 和滋 大村 稔 堀内 晋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.6-11, 2013-01-20 (Released:2014-02-21)
参考文献数
15

(目的) 透析患者は一般人と比較して,腎癌発生率が高いため,腹部超音波検査,CTによる定期的スクリーニングが有益とされている.また,透析腎癌は高率に後天性嚢胞性腎疾患(ACDK)を合併し,その関連性が示唆されている.当院におけるスクリーニングの有用性,およびACDKとの関連性に関して検討した. (対象・方法) 2005年8月より2011年6月までに,当院で慢性腎不全に対し血液透析療法を施行された624症例と,そのうち腎癌症例12例を対象に解析を行った.スクリーニングは年に1回の腹部超音波検査で行った.透析腎癌の罹患率,発生率,発見契機とその予後,およびACDKの合併率を用いて考察した. (結果) 透析腎癌の罹患率は2.08%,年間発生率は0.33%と高率であった.発見の契機はスクリーニング超音波検査7例(A群),他疾患精査目的の腹部超音波もしくは腹部CT検査2例(B群),有症状精査3例(C群)であった.A群およびB群は1例の他因死を除き,全例癌なし生存であった.それに対してC群は,診断後全例6カ月以内に癌死した.C群3例のうち,スクリーニング検査を施行された症例は1例のみであった.また,ACDKの合併率は91.7%であった(p=0.0026). (結論) 透析患者の腎癌スクリーニング検査が予後に関し有用であると考えられた.透析腎癌にACDKは高率に合併し,その関連性が示唆された.
著者
小川 貢平 阪口 和滋 岡 優 永本 将一 黒澤 和宏 浦上 慎司 岡根谷 利一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.41-46, 2019-01-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

症例は59歳女性.2015年3月肉眼的血尿,右腰部痛を主訴に当科を受診した.腹部CTにて両側腎盂に長径右18mm大,左15mm大の結石を認めた.並存疾患として潰瘍性大腸炎があり,サラゾスルファピリジン(SASP)を約30年間内服していた.尿検査所見は酸性尿で,尿酸結晶を認め,腹部単純X線では結石陰影を認めなかったことから尿酸結石を疑い,尿アルカリ化薬と尿酸生成抑制薬の投与を開始した.しかし,治療開始3カ月後の腹部CTにて,両側の腎結石は右25mm大,左24mm大と増大傾向を示し,右腰部痛増悪を認めたため,2015年9月右腎結石に対し,経尿道的砕石術(TUL)を行った.結石は橙色で柔らかく,約半分を砕石し結石分析に提出したところ,尿酸結石ではなく薬剤性結石が疑われた.結石と共にSASP錠を提出し,赤外分光分析法にて照合したところ結石と類似していたため,SASPによる薬剤性尿路結石と診断した.治療として潰瘍性大腸炎治療薬をSASPからメサラジンに変更し,尿アルカリ化薬の増量を行ったところ,3カ月後の腹部CTで両側腎結石消失を認めた.その後,結石予防薬の投与なしで,結石再発は認めていない.