著者
阪本 秀昭
出版者
天理大学学術研究委員会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.161-179, 2013-02

戦前期にソ連における宗教弾圧を逃れて中国に渡ったロシア正教古儀式派礼拝堂派教徒の一部は,1960年代以降に南米を経て北米に再移住し,合衆国オレゴン州を中心にコロニーを形成し伝統的信仰生活を送っている。ところが前世期末ころから,北米や南米における礼拝堂派内で,十字を切る際の指の形をめぐって論争が繰り返され,対立が先鋭化している。本稿は,この対立の動向を宗派の宗教会議資料をもとに追跡し,対立の背後にある歴史・文化的背景を探ることを目的としている。