著者
阿部 宏行
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-12, 2015-03-20 (Released:2017-06-12)

本研究は,子どもの絵の発達と,その指導のあり方を考えるものである。本稿は,小学校6年間を継続的に調査した「食事の風景」をもとにして,大人の絵に近づく子どもの絵の空間の表現の発達は,様々な方向からの視点でかかれた観面混合などを繰り返しながら進んでいくことを記述した。その変化の過程で,食卓の奥の縁の長さが,手前の縁の長さより長くなる傾向がある。これは子どもの成長と表現との間に,「想像視」の働きがあり,それがやがて,1点から固定的な見方の視覚優位の大人の絵になることを指摘した。その上で子どもの絵の変化をとらえつつ指導することの重要性を論述した。