著者
飯田 有輝 陳 真規
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.134-138, 2020 (Released:2020-09-15)
参考文献数
26

ICUにおける重傷者の救命率は改善している一方, 退院後の生活復帰の低下が問題となっている. 特にICU‐acquired weakness (ICU‐AW) は回復期の身体機能やADLの獲得を遅延させ中長期的な予後に影響を与えるため, リハビリテーションと栄養療法は重要な治療の一つであると考える. 侵襲下では筋蛋白質が分解されエネルギーに転換される. また不動状態が続くことで, さらに異化が亢進し筋肉量が減少する. 一方, 侵襲下における内因性エネルギー供給増加を考慮せず栄養を投与することでover feedingとなり, むしろ予後は悪化する. 重症患者の栄養療法はtrophic feedingが推奨されているが, 高蛋白質投与の有効性について多数報告されている. 重症患者の身体機能の回復を最大限に引き上げる取り組みとして, 適切なリハビリテーションと栄養療法の併用が重要である. 本稿では侵襲下における身体機能低下の病態を概説し, 当院ICUにおける栄養プロトコールと運動療法のステップアップ基準について紹介する.