著者
陳 継東
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.862-888, 2011-03-30 (Released:2017-07-14)

一八九〇年代以降、中国では、仏教は近代国家の形成に欠かせない「宗教」として認識されるようになり、その社会的位置づけが大きく変動したことは注目に値する。多くの改革志向を持つ知識人は仏教を利用して、近代国家の樹立を目指した。これと同時に、仏教界からの社会変革への発信も強まっていったのである。本稿はこうした動きに焦点をあわせ、仏教がいかに再認識され、近代社会への転換に積極的に関わったかを明らかにする。具体的には、まず「宗教」という概念の形成過程を考察する。つぎに、近代国家の実現に求められる自立的な個人の確立と仏教との関係、それから文明と野蛮に峻別された国際秩序に抵抗し打破するために、仏教は果たした役割、さらに、清末中国のナショナリズムの形成と仏教の関係を明らかにする。