著者
陳 香延 植田 憲
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.2_85-2_94, 2014-09-30 (Released:2014-10-25)
参考文献数
53

大甲藺工芸は,台湾中西部の大安渓流域に自生する特有の藺草の一種である大甲藺を素材として,当該地域で制作され使用されてきた生活工芸である。当該地域の人びとによって,大甲藺が発見され,それを素材とした大甲蓆がつくられてからの歴史のなかで,大甲帽子,煙草入れなどのさまざまな生活用具が制作され,産業としての繁栄を遂げるに至った。文献調査,現地調査に基づき,以下の結論を得た。(1)大甲藺工芸の発展の礎は,台湾大甲地域の人びとの生活のなかで,大甲藺という材料が発見され,その利活用方法のみならず,より良質な材料をつくり出すための工夫が,人びとの手でさまざまになされたことにある。(2)大甲藺工芸は,当該地域の人びとの生活のなかで全体活用が徹底されるなど,生活との密接な関連のなかで発展してきた,まさに当該地域の生活文化を代表する存在である。(3)大甲藺工芸は,当該地域の人びとを結びつける重要な媒体であった。