著者
隅野 留理子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.3, pp.209-217, 2007 (Released:2007-03-14)
参考文献数
31

インターフェロンベータ(IFNβ)-1a筋注用液状製剤(販売名:アボネックス®筋注用シリンジ30μg)は天然型ヒトIFNβとほぼ同じ構造をもつ遺伝子組換え型のインターフェロン製剤である.厚生労働省により特定疾患に指定されている多発性硬化症に対しIFNβ-1a 30 μgを週1回筋肉内投与することにより,脳MRI検査で検出される病変の新規発現,拡大を抑え,再発を抑制することが確認された.国内臨床試験において,日本人の多発性硬化症患者を対象に,IFNβ-1a 30 μgを週1回,24週間筋肉内投与し,投与前後の脳MRI検査1回当たりのガドリニウム(Gd)増強病巣数,新規Gd増強病巣数により有効性を評価した結果,病巣数は有意に減少した.また,年間再発率が61.4%,年間静注ステロイド治療回数が53.2%低下した.海外臨床試験においては,外国人の多発性硬化症患者を対象に,IFNβ-1aまたはプラセボを週1回,最長2年にわたり筋肉内投与し,身体機能障害の持続的進行開始までの期間を評価した結果,プラセボ群と比較して有意に延長した.また,Gd増強病巣容積,年間再発率,年間静注ステロイド治療回数も,プラセボ群と比較して有意に減少した.さらに,初発の脱髄症状を伴い臨床的に診断確実な多発性硬化症へ移行するリスクの高い外国人の早期多発性硬化症患者を対象に,最長3年間にわたり臨床的に診断確実な多発性硬化症発症までの期間を評価した結果,プラセボ群と比較して有意に延長した.また,他の試験結果と同様に,脳MRI検査で検出される病巣数および病巣容積も有意に減少させた.一方,IFNの臨床効果を減弱させる可能性が示唆される中和抗体の発現率は,海外で行われたIFNβ-1a長期投与試験において1~7%であった.国内で実施された臨床試験においては投与期間が24週間と短期であり,全例で中和抗体の発現は認められなかった.IFNβ-1a 30 μgの週1回筋肉内投与は,国内および海外の臨床試験において問題となるような有害事象は認められず,高い臨床的有効性と忍容性を示した.