著者
青山 満喜 松尾 歩
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3232-E3P3232, 2009

【はじめに】軽費老人ホームにおいて,日常生活動作(以下,ADL)維持,健康維持,運動習慣のために「機能訓練教室」と称した運動を実施している.今回,理学療法士による運動の選択,効果などに関して若干の知見を得たので報告する.報告については,施設長ならびに参加者に対し書面および口頭で説明し同意を得た.<BR>【目的および方法】ADL維持ならびに運動習慣を着眼点とし,楽しく,無理なく運動できるよう実践している.内容として上下肢の運動,バランス訓練,ストレッチングとし,運動時間は毎回60分,月に2回実施している.1.上肢の筋力維持・向上を目的とした運動2.下肢の筋力維持・強化を目的とした運動3.立位バランス維持・向上を目的とした片脚ならびにタンデム立位保持4.四這い位での上下肢挙上のバランス練習5.柔軟性を維持するためのストレッチング<BR>【結果】機能訓練教室を毎月2回,1年間に計24回実施している.平成19年度中に参加した延べ人数は175人であり,参加者の最高年齢は93歳であった.参加者の意見として,「運動して汗をかくのは気持ちがいい」,「運動後に身体が温まる」,「運動後に身体が軽く感じ動きやすくなる」など肯定的なものが多く,更に,痛みの緩解や柔軟性の向上などの効果も寄せられた.その他として,「冬は部屋に閉じこもりがちになるが,『機能訓練』の時は部屋から出ようと思う」,「他の人と話をする良い機会になる」,「一人では運動できなくても皆で運動するとやる気が出て続けることができる」などの意見もあった.<BR>【考察・まとめ】軽費老人ホームに入所し続けるには,起居動作,移動動作,食事動作,更衣動作,整容動作,トイレ動作,入浴動作,コミュニケーションの自立が必要最低条件とされている.機能訓練教室の参加者は皆このことを承知しており,ADL自立の重要性を認識している.一日三度の食事は施設内の食堂で提供されるため,生活関連動作である炊事は自立していなくても入所は可能であり,広義のADLとされる洗濯,買物,掃除等に関してはヘルパーを利用することも可能である.施設内は段差も少なく,移動しやすく設計されてはいるものの,施設内を移動できる歩行能力(歩行補助具の使用を含む)が要求される.軽費老人ホームでは,毎月さまざまな「○○教室」と称する活動が行われているが,これらは華道,茶道,書道,というsedentaryなものが多いため,入所者の現在のADL能力を維持・向上させ,さらに運動を習慣付ける必要がある.現在の「機能訓練教室」を続けるにあたり,「きっかけ」,「継続」,「効果」の3要素が必要であると考える.そのためには,理学療法士の観点による環境設定,表現力,説明力などが今後さらに求められてくるものと思われる.今後も楽しく,わかりやすく,入所高齢者に無理のないADLおよび健康維持のために運動を習慣づけるような「機能訓練」を推し進めていきたい.