著者
青木 万里
出版者
日本学生相談学会
雑誌
学生相談研究 (ISSN:09146512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.35-46, 2009-07
著者
青木 万里
出版者
埼玉純真短期大学
雑誌
埼玉純真短期大学研究論文集 (ISSN:18827454)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-15, 2009-03-31

筆者は今まで青年期の発達支援に取り組む中で、大学生を対象に自己理解を深める働きかけが学生の自己洞察を促し、自己確立の手がかりとなることを事例研究・調査研究の形で報告してきた。今後、より効果的な自己理解の促進方法を検討するために、本稿では自己理解に関する先行研究を概観することを目的とした。日本及び海外の文献を検索したところ91件が抽出されたが、内容を整理し、自己理解に関するプログラム報告、自己理解因子を含む尺度研究、自己理解の発達研究など、今後の研究に有益と想定される文献55件を検討した。結果、自己理解に関するプログラムの実施は、自己理解に留まらず自尊心、自己受容、自己肯定感、他者理解の向上を始め自己の内面に様々な変化をもたらすことがわかった。特に幾つかの研究報告からは、自己把握に関する質問、自己の捉え直しや自己の一貫性を見出す手法、自己の内的傾向に関する自己理解因子の抽出など、今後の自己理解を深めるプログラムの改良や自己理解尺度の作成に有益な示唆が得られた。また大学生のどの時期にどの場面で、どの位の時間を要して自己理解の機会を提供することが最も効果的かは、今後実践の回数を重ねることでより一層の手法の洗練化が必要である。