著者
青木 幸聖 穴田 一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.990-995, 2020-04-15

近年,完全情報ゲームであるチェス,オセロ,将棋といったゲームでは人間のトッププレイヤと同等の実力を持つ人工知能(AI)が実現されている.一方,不完全情報ゲームにおいては,ポーカーでは人間のトッププレイヤと同等の実力を持つAIが実現されているが,麻雀では実現されていない.なぜなら,本研究が対象とする「麻雀」は完全情報ゲームであるチェスや将棋と異なり,対戦相手の所持している手が見えないため,相手の状態や状況の予測が難しいうえ,同じ不完全情報ゲームであるポーカーより考えられる戦局が多岐にわたるゲームだからである.そのようななか,近年トッププレイヤに近い強さを持つといわれる水上ら(2013, 2014)による麻雀AIが発表されている.しかしこのAIは役を考慮した鳴きができないという問題点がある.一方,原田らは「Complete Hand Extraction(CHE)」で構築できる可能性の高い役を考慮した着手を実現した.そこで本研究では,役構築を考慮可能な原田らの手法「CHE」を用いて,役構築を考慮した鳴きが可能な麻雀AIを構築し,CHEと対戦させることによりその有効性を確認した.