著者
青柳 尚朗
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-29, 2021-06-10 (Released:2021-06-18)
参考文献数
27

本研究では,社会的事象の本質を捉える思考の促進を目的に,中学校社会科で実験授業を実施し,その効果を検討した.学習内容を「具体的事実」「個別的本質」「普遍的本質」に構造化し,単元内に「複数の具体的事実を関連づけて共通点を探究する過程」「その社会的事象の持つ,他事象にも活用可能な性質を考察する過程」を組織した.その結果,複数の具体的事実を把握し,その共通点を探究することで個別的本質の理解が促進されること,そこで把握された個別的本質のうちのどの性質が近接領域の他事象にも適用可能かを検討することで普遍的本質の理解が促進される可能性が示された.上記の過程では,「①個人での多様な探究→②クラス全体での多様な思考の関連づけ→③そこで関連づけられた思考を生かした個人探究」という協同的・探究的な学習過程が組織され,①③で多くの情報を関連づけた生徒の中に普遍的本質の理解を達成する者が現れることが示唆された.