著者
青野 正太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.411, 2022-11-01 (Released:2022-11-01)

今月号は「検索技術者検定」を取り上げます。検索技術者検定(検索検定)は,情報科学技術協会(INFOSTA)の実施する認定試験です。検索検定は,公式HPによれば“企業,大学,組織等において,研究開発やマーケティング,企画等のビジネスで必要とされる信頼性の高い情報を入手して活用できる専門家を育成することを企図して実施”されています1)。コンピューターやインターネットの一般家庭への普及,さらにはスマートフォンの登場により,一般の人々も当たり前に検索エンジン等の利用により情報検索を行う時代となりました。そのため旧来の「サーチャー」2)と「エンドユーザー」の区別はなくなりつつあると考えられます。一方,誰でも検索ができるからこそ,情報の海から必要な情報を適切に引き出し,利用できるようにするための情報検索の知識・能力が重要となると考えます。本検定は知識・能力の証明に,また合格に向けた学習による知識・能力の養成に役立つのではないでしょうか。そこでこの特集では本検定について解説し,試験の合格,つまり情報検索の知識・能力を持つインフォプロに求められる能力を明らかにするとともに,大学や企業での活用事例を取り上げ,本検定の意義や果たしうる役割を明らかにする一助としたいと思います。まず,三井化学株式会社研究開発企画管理部であり,情報科学技術協会試験実施委員会に長く携わられた望月聖子様には,検索検定3級・2級・1級それぞれの試験内容と求められる知識・能力について,丁寧に解説していただきました。鶴見大学名誉教授であり,検索検定3級・2級公式テキスト3)4)の編著者でもある原田智子様には,検索検定におけるキャリアパスを解説した上で,2級合格から1級合格までの時間的傾向と合格者の寄稿文から,検定合格者のキャリアパスを分析していただきました。駿河台大学メディア情報学部の石川賀一様には,所属大学における検索検定の取得支援の取組について,学生の検索スキルを養成する意義を踏まえて解説していただきました。日本医薬情報センター(JAPIC)事業部門医薬文献情報担当の井上彰様には,検索検定のJAPICでの活用と検定取得者の声について,JAPICでの事業や本協会の活動への参画を含め解説していただきました。読者の皆様におかれましては,本特集記事を通して本検定の内容や活用方法について知っていただき,情報検索における知識・能力の向上について考える一助にしていただければ幸いです。(会誌編集担当委員:青野正太(主査),今満亨崇,海老澤直美,野村紀匡,長谷川智史)1) “検索検定(正式名称:検索技術者検定)”.情報科学技術協会.https://www.infosta.or.jp/examination/, (参照 2022-10-09).2) 以下の資料には,サーチャーは“情報を求め,それを実際に利用する人(エンドユーザー)に代わって,必要とされる情報を,適切なデータベースから検索する人で,通常,そのための専門的な技術を持っていることが要件とされる”とされています。“サーチャー”.日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編.図書館情報学用語辞典 第5版.丸善出版,2020,p.853) 原田智子編著,情報科学技術協会監修,吉井隆明;森美由紀著.検索スキルをみがく:検索技術者検定3級公式テキスト 第2版.樹村房,2020,147p.4) 原田智子編著.情報科学技術協会監修,小河邦雄[ほか]著.プロの検索テクニック:検索技術者検定2級公式推奨参考書 第2版.樹村房,2020,181p.
著者
青野 正太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.191, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

今月号は,「インフォプロの認定制度」と題してお届けします。昨今,図書館においては職員の非正規率の増加が指摘され,日本図書館協会図書館政策企画委員会専門職制度検討チームから「専門職制度検討チーム報告~非正規雇用職員が職員数の多くを占める時代における職員制度のあり方について~」(2019年3月)という報告が出されました1)。さらに,日本私立大学連盟が提言した「ポストコロナ時代の大学のあり方~デジタルを活用した新しい学びの実現~」(2021年8月)においては,“基準で想定されている専門的職員(第38条3)である司書は図書館機能の多様化に伴って,図書館職員に求められる能力も多様化したため,形骸化している”と指摘されています2)3)。このように,図書館司書をはじめとするインフォプロの働く環境は厳しい状況にあります。そうした中で,認定制度はスキルや経験を証明することにつながるとともに,キャリア形成を支援する手段となることが期待されます。そこで本特集では,インフォプロの認定制度について経緯を含めて解説し,その意義や今後果たしうる役割を明らかにしたいと考えています。まず,総論として,相模女子大学学芸学部の宮原志津子様には,専門職の質保証として機能している海外の図書館情報学専門職資格の事例を取り上げ,日本の司書資格における課題を示していただきました。次に各論として,3種類の認定制度について,制度運営に携わっている方に,制度づくりの背景から今後の課題に至るまで解説していただきました。青山学院大学コミュニティ人間科学部の大谷康晴様には,日本図書館協会が2010年に創設した認定司書制度についてご解説いただいた上で,専門性評価の必要性と制度化における課題についても触れていただきました。東京慈恵医科大学学術情報センターの北川正路様には,日本医学図書館協会が2004年に創設したヘルスサイエンス情報専門員制度についてご解説いただきました。岐阜女子大学文化創造学部の井上透様には,2006年に始められた日本デジタル・アーキビスト資格認定機構によるデジタル・アーキビスト認定を中心とする人材育成制度についてご解説いただきました。最後に,認定制度の活用事例として,認定司書,ヘルスサイエンス情報専門員として活躍されているインフォプロの方に取組内容をお寄せいただきました。日本図書館協会認定司書第1060号である砂生絵里奈様には,ご自身の認定司書としての活動についてご解説いただきました。ヘルスサイエンス情報専門員(上級)である牛澤典子様には,ご自身のヘルスサイエンス情報専門員としての活動についてご解説いただきました。読者の皆様におかれましては,本特集記事を通して認定制度の現状を理解していただくとともに,制度の活用についても知っていただき,インフォプロのキャリア形成について考えるきっかけとなれば幸甚です。なお,情報科学技術協会で実施している検索技術者検定もインフォプロの能力を認定する制度といえるものですが,別稿で扱う予定のため,今回は取り上げていません。(会誌編集担当委員:青野正太(主査),安達修介,長谷川智,長谷川幸代)1) 専門職制度検討チーム報告:非正規雇用職員が職員数の多くを占める時代における職員制度のあり方について.日本図書館協会図書館政策企画委員会専門職制度検討チーム.2019,34p.http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/senmonshokuseido.pdf, (参照2022-04-26)2) ポストコロナ時代の大学のあり方:デジタルを活用した新しい学びの実現.日本私立大学連盟.2021,23p.https://www.shidairen.or.jp/files/user/20200803postcorona.pdf, (参照2022-04-26)3) なお,日本私立大学連盟は2021年10月21日に“ポストコロナ時代に向け,図書館という場の機能は高度化・多様化する極めて重要な存在”であり,“その機能と合わせ司書の役割は,専門職員として更に大きな意味を持つものであるにも関わらず,現行の大学設置基準の条文では不十分であり,改めてその役割を再定義する必要がある”旨を説明するページを公開しています。“提言「ポストコロナ時代の大学のあり方」における図書館等の記述について”日本私立大学連盟.https://www.shidairen.or.jp/topics_details/id=3412, (参照2022-04-26)
著者
青野 正太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.421, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

今月号は,「起業支援における情報提供」と題してお届けします。起業の促進は雇用創出や地域経済活性化という点で効果があるとされ,重要であると考えられています。しかし,世界各国の起業活動を比較したGlobal Entrepreneurship Monitor(GEM)調査によれば,日本の起業活動は先進国の中でも低水準であると言われています1)。そうした状況を改善すべく,国・自治体や商工会議所といった様々な団体により,起業の支援が行われています。特に,近年の起業支援の特徴は情報提供をはじめとするソフト支援にあると言われています2)。そこで本特集では,起業支援における情報提供をテーマとして扱うことにしました。起業支援の現状や,起業希望者が求めている支援を明らかにした上で,起業支援において情報提供を担っている機関が,各々の強みを生かしてどのような支援を行っているかをお伝えします。まず,総論として,東洋大学経済学部の安田武彦様には,日本における起業支援策の展開と今後の動向についてご解説いただきました。現代に至るまで日本はどのように起業支援策を展開してきたかを時系列で,生じた課題等を踏まえながら述べていただいています。次に,神戸大学大学院経営学研究科の内田浩史様,帝塚山大学経済経営学部の郭チャリ様には,起業者を対象とするアンケート調査から得られた5つの起業者のサンプルを比較分析し得られた起業者の属性や傾向について,ご解説いただきました。特に,起業において大きな課題となりうる資金調達について,述べていただいています。さらに,起業支援において情報提供を担っている機関として,図書館,大学,金融機関の3機関に事例をご解説いただいています。安城市アンフォーレ課の市川祐子様には,公共図書館における起業支援の事例として,安城市図書情報館におけるビジネス支援サービスについてご紹介いただきました。記事中では,館内に併設されている産業支援センターである「ABC(安城ビジネスコンシェルジュ)」との連携についてもご解説いただいています。京都大学産官学連携本部の室田浩司様には,大学における起業支援の事例として,文部科学省と主要国立4大学による「官民イノベーションプログラム」についてご紹介いただきました。特に,基礎研究を事業化するための資金助成制度である「POCファンド事業」と,大学発ベンチャーに対して株式投資を行う「国立4大学ベンチャー投資事業」の取組を中心にご解説いただいています。多摩大学経営情報学部の長島剛様には,地域金融機関における起業支援の事例として,多摩信用金庫における起業支援をご紹介いただきました。当該金融機関の所在する多摩地域や,地域金融機関を取り巻く状況を踏まえ,取組内容を詳しくご解説いただいています。読者の皆様におかれましては,起業支援における現状,課題を把握していただくとともに,自らの組織の強みをいかして支援を行っている事例を学んでいただければと思います。本特集記事を通して,ご所属の組織においてどのように起業支援に係る情報提供を行うのか,考えるきっかけとしていただければ幸いです。(会誌編集担当委員:青野正太(主査),海老澤直美,炭山宜也,水野澄子)1) 岡田悟.我が国における起業活動の現状と政策対応.レファレンス.2013,no.744,p.29-51.2) 金恵成.日本の起業の特性と支援課題.大阪観光大学紀要.2013,no.13,p.37-44.
著者
青野 正太 余野 桃子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.495-500, 2011-12-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
16

都立中央図書館で行っている,オンラインデータベースやインターネットを活用した利用者へのサポート事業として,1)オンラインデータベースの提供と検索講習会による利用者サービス,2)Eメールを活用したレファレンス事例,3)都・区市町村立図書館間協力レファレンス担当者会およびその担当者会でのアンケート集計結果である「都内公立図書館インターネット等サービス状況」を紹介する。さらに,「都内公立図書館インターネット等サービス状況」については,各自治体の導入するオンラインデータベースを中心に現状分析を行う。