著者
韓 惠軫 内川 惠二
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.329-339, 2016 (Released:2018-01-25)
参考文献数
24

2000年に入ってからアニメーション制作現場にデジタル彩色システムが導入され,アニメーションの色再現が重要になってきた.写真の色再現では記憶色を基に再現される肌色が好まれることが知られ,テレビ画像では肌色の許容範囲が狭いことが明らかになるなど、肌色の研究が進んできている.しかし,アニメーション制作においては肌色の表現が難しいにも係わらず,それに関する研究は極めて少ないのが現状である.そこで本研究では,セル画調の人物顔の肌色を対象に,好ましい肌色および肌色判断と顔形状との関係を明らかにすることを目的とした.その結果,セル画調の人物顔における好ましい肌色として,明るい肌色を選ぶ傾向が示された.顔形状に対する好ましい肌色の被験者間の分布範囲が円形刺激の場合よりも狭かった.従って,顔形状間にも違いあることが明らかになった.また,色マッチングの実験で、肌色の判断には顔形状はほとんど関係していないことが示された.ただし,好ましい肌色付近の色における肌色判断が安定であること,また,スクランブル顔,上下逆転顔,パーツ不足顔では肌色の判断が不正確である傾向にあり,顔知覚と肌色判断が関係していることが示唆された.