著者
須藤 沙織 細井 匠
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>安心してリハビリを行うことができる環境を作ることを目指し,2011年3月,「小金井リハビリ連絡会」が正式に発足し研修部が置かれた.研修部では会員が望む研修内容を明らかにするため本調査を行った.<BR>【方法】<BR>小金井リハビリ連絡会会員63名を対象に,郵送自記式質問紙検査法を繰り返すデルファイ法を用いて調査した.調査1では対象者が望む研修内容を5つ以内で自由に記載していただき回収した.また基本属性として年代,性別,所属機関,各職種免許取得からの年数を尋ねた.調査2では集まった研修内容に対する興味の程度について5段階での評価を依頼し回収した.調査3では,調査2で返信のあった方を対象に,調査2における各研修内容に対する本人評価得点と,参加者全員の評点の中央値と四分位範囲を提示した上で,再評価を依頼し回収した.調査3で得られた回答を間隔尺度とみなし平均値を基にランキングを作成した.また対象者に書面にて本研究の主旨と得られたデータは個人が特定されないよう配慮し発表する旨を伝え,同意を得た.<BR>【結果】<BR>調査3で得た30名の回答の中の,38本の研修内容の評点を基にランキングを作成した.30名の職種はPT17名,OT13名,免許取得からの年数は平均9.4±10.0年であった.全体のランキング1位は「腰痛の評価とアプローチ」,2位「脳卒中患者の歩行練習」,同率3位「注意障害へのアプローチ」,「慢性疼痛に対するアプローチ」であった.免許取得からの年数で分類すると3年以下の8名では1位が「画像診断の方法」,同率2位「注意障害へのアプローチ法」「脳卒中患者の歩行練習方法」,「腰痛の評価とアプローチ」等であり,年数10年以上の9名では1位が「臨床動作分析からの治療介入」,同率2位「訪問リハビリの現状と課題」「腰痛の評価とアプローチ」,同率3位「慢性疼痛に対するアプローチ」,「小金井市のサービス提供内容について」等が上位にランクされていた.<BR>【考察】<BR>全体1位となった「腰痛の評価とアプローチ」は職種別、免許取得からの年数別のランキングでも上位にランクしていた.腰痛患者はリハビリテーションの対象となる機会が多いため上位に入ったと考えられる.年数別では,新人は評価等の基礎知識,ベテランでは保険やサービスに関する事が上位となり相違を示した.職種,年数によって求める研修が異なることが明らかとなり,研修を提供する前に,どの層を対象として企画するか熟考する必要がある.<BR>【まとめ】<BR>研修は技術向上のために不可欠だが,ニーズ調査は十分になされていない.対象者の臨む研修内容を明らかにした点は,今後有意義な研修を行う為に貴重な資料となった.