著者
須藤 葵
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.141-150, 2006-03

精神科領域においては、境界性パーソナリティ障害(Borderline personality disorder:BPDと略)患者の看護経験を有する多くの看護者が、「BPD患者の看護は難しい」という観念を持っている。本研究は、このような観念が看護者の中に生まれる過程において看護者の心の中にどのような動きがあるのか、参与観察によって得られたデータと11人の看護者のインタビューから考察した。看護者は無意識のうちに対象の特徴をとらえ、自らがもつ様々な“フレーム”に当てはめて対象を解釈し理解しようとしていることがわかった(自己との相互作用)。フレームはいくつかに分類され、看護者の中で優先して用いられたり、強化されたりもしている。BPD患者の看護においては、既存のフレームに合致しない状況が多く生じることによって看護者の動揺を招いたり、経験によって作り出したフレームにのみ情報を当てはめて対象像を固定してしまい、柔軟に対応できていないことがある。そのような時にBPD患者に対する看護が難しいという観念が生じることが示唆された。