著者
吉田 堯躬
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.1, pp.143-152, 2001

2000年の10月に財政当局はかねてからの課題に答えるため『国の貸借対照表(試算)』を発表した。公債残高の累増に対する懸念から日本財政システムが依然として明治期以来の現金主義にとどまっている点が指摘された点へのひとつの解答ではある。しかし,その努力は買えるし, 一定の役割は有するであろうが, 改革ののろし-すなわち, 現行の予算システムが単年度の財政状況によって意思決定され,現在及び将来にわたる国民の負担や, その持つ資産の状況が視野に入らないことへの疑念には答となっていない。本稿は現行の公会計制度の問題点やその改革案の背景にある福祉国家の財政への知的階層のいら立ちを指摘するとともに, 発表された『国の貸借対照表(試算)』について公会計改革への期待との落差を指摘し, 福祉国家における財政民主主義の限界についての考察を行うものである。
著者
須藤 葵
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.141-150, 2006-03

精神科領域においては、境界性パーソナリティ障害(Borderline personality disorder:BPDと略)患者の看護経験を有する多くの看護者が、「BPD患者の看護は難しい」という観念を持っている。本研究は、このような観念が看護者の中に生まれる過程において看護者の心の中にどのような動きがあるのか、参与観察によって得られたデータと11人の看護者のインタビューから考察した。看護者は無意識のうちに対象の特徴をとらえ、自らがもつ様々な“フレーム”に当てはめて対象を解釈し理解しようとしていることがわかった(自己との相互作用)。フレームはいくつかに分類され、看護者の中で優先して用いられたり、強化されたりもしている。BPD患者の看護においては、既存のフレームに合致しない状況が多く生じることによって看護者の動揺を招いたり、経験によって作り出したフレームにのみ情報を当てはめて対象像を固定してしまい、柔軟に対応できていないことがある。そのような時にBPD患者に対する看護が難しいという観念が生じることが示唆された。
著者
木村 哲夫 荘島 宏二郎 永岡 慶三
出版者
新潟青陵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

小規模であってもコンピュータ適応型テスト(CAT:受験者の解答が正解か不正解かによって、次の設問の難易度をコンピュータが調整して出題するテスト)を,複数の教員や学校が協働作業をすることによって、開発し実施できることを示すとともに、その結果を能力記述文と対応付けることを目指した。あわせて、学習管理システム(LMS:コンピュータ上で行われる学習を管理するシステム)で簡単にCATを実施可能にするプログラムの開発を行い公開した。
著者
上原 正希
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.7-15, 2007-03

本稿の内容は、医療機関にて、医療専門職集団と共に、社会福祉の視点からチーム医療の構成メンバーとして、業務を遂行する医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)について考察するものである。Cureの視点が第一優先とされる、医療の現場で、社会福祉の視点をもって支援を行うことは、特殊なことで、このような中での業務遂行には独自性が必要である、業務を遂行する場合には、様々な制約を受けることは容易に想像がつく、かつ、MSWの資格や業務のあり方についての歴史的側面などからも制約がある。MSWの制約について、ここでは、「私見」、「竹内一夫氏」、「松浦信氏」の文献などから、MSW業務遂行における制約を明らかにし、図式化し構造化を試みる。そしてMSWが組織はもとより、社会にも根付くための方策についても触れている。
著者
樋澤 吉彦
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.5, pp.77-90, 2005

本稿は,介入/制限の根拠原理の1つとされており,社会福祉や医療の現場においては一般的に忌避すべき概念とされている「パターナリズム」の概念,様態,及び正当化原理の整理・検討を通して,被介入者のその都度の表面的・実態的同意は,介入の根拠としては不十分であることを提示することを目的としている.パターナリズム正当化原理は暫定的に,(1)当該個人の状況/状態が生命の保全のための緊急性の高い場合,(2)当該個人の状況/状態が生命保全のための緊急性は低いものの持続的な支援を必要とするような場合,という2つのパターンにおいて想定できる.(1)の場合は原則的に合理的人間モデルに基いた介入が行われる.(2)の場合は原則的に当該個人の意思反映モデルに基いた介入が行われる.主要かつ本来的な正当化原理は(2)である.徹底的な「対話」を土台とした関係構築がこの原理の土台となる.
著者
和田 由紀子 小林 祐子
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.5, pp.67-75, 2005
被引用文献数
1

本研究では,バーンアウト(燃え尽き症候群)と対人関係の感情的側面がどのように関連するのか明らかにするために,全国の緩和ケア病棟に勤務する看護師を対象に質問紙による調査を行った.使用した尺度は日本語版バーンアウト尺度、情動的共感性尺度、他者意識尺度である.この3尺度の全尺度得点・下位尺度得点の相関関係、及びバーンアウト全尺度得点の高低15%の対象について分析・検討したところ、全体としてバーンアウト尺度の「情緒的消耗感」と他の2つの尺度間に関連がみられないこと、高バーンアウト群は低バーンアウト群に比べ感情的な影響の受けやすさがあり、他者の外面やイメージを意識しやすいということが示唆された.
著者
中村 恵子
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.167-176, 2007-03

構成主義の考えは、現在、教育の文献に浸透している。構成主義は、学習理論、教授技術、一般的な教育学のアプローチを特徴づけるために用いられる。構成主義は、知識はいつも人が構成するものであることを意味する。構成主義は、生徒による積極的な参加を促進する必要性を強調するものである。構成主義の2つの主要なタイプ―心理学的構成主義と社会的構成主義―には、重要な教育的な意味がある。心理学的構成主義は、個人の学習に焦点を合わせる。「分析の単位」は、個々の知る人である。しかしながら、社会的構成主義にとって、正しい単位は社会的な集団または文化である。心理学的構成主義と社会的構成主義を比較することによって、構成主義における学びの理論を明らかにすることができる。
著者
松村 幸子 二階堂 一枝 篠原 裕子 菅原 京子 花岡 晋平
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.161-182, 2003-03

日本の四大公害病のlつである新潟水俣病に対する、行政に働く保健師の活動について、37年前の発生当初から現在までを時系列で整理した。その結果を1978年アルマ・アタ宣言のプライマリ・ヘルス・ケアの4原則1.住民のニーズ指向性 2.住民の主体的参加 3.資源の有効活用 4.協調、統合に照らして分析を試みた。先輩諸姉の語りや文献を通して、保健師は新潟水俣病発生以来今日まで、この問題にかかわり続けできたことが明らかとなった。複雑な社会的背景を持った問題であったが、さまざまな看護ケアが住民サイドに立って実施されていた。健康を人々の権利として位置づけたPHCの理念に沿って活動が進められていたが、住民の主体的参加、他専門職および住民組織との協調、統合については生かしきれず、今後の課題である。
著者
中村 悦子 鈴木 宏
出版者
新潟青陵大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

「外国人看護師候補者の看護師資格取得・教育に関わる大学の教育支援システム構築」に向け実施した。実施対象は3医療施設(新潟・長野・東京)で5人のEPA看護師。支援の大学教員は、3大学(新潟青陵大学・佐久大学・了徳寺大学)4人である。支援内容は、1)「系統別看護師国家試験問題」をオンラインで学習支援、2)Skypeによる、面接指導、3)目標を設定し、訪問指導、であった。結果、国家試験合格者は5人のうち1人であった。結論、国家試験合格には、日本語能力、異文化適応能力を必須とし、そのレディネスとモチベーションを整えることが重要な課題である。
著者
松村 幸子 二階堂 一枝 篠原 裕子 菅原 京子 花岡 晋平
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.3, pp.161-182, 2003
被引用文献数
1

日本の四大公害病のlつである新潟水俣病に対する、行政に働く保健師の活動について、37年前の発生当初から現在までを時系列で整理した。その結果を1978年アルマ・アタ宣言のプライマリ・ヘルス・ケアの4原則1.住民のニーズ指向性 2.住民の主体的参加 3.資源の有効活用 4.協調、統合に照らして分析を試みた。先輩諸姉の語りや文献を通して、保健師は新潟水俣病発生以来今日まで、この問題にかかわり続けできたことが明らかとなった。複雑な社会的背景を持った問題であったが、さまざまな看護ケアが住民サイドに立って実施されていた。健康を人々の権利として位置づけたPHCの理念に沿って活動が進められていたが、住民の主体的参加、他専門職および住民組織との協調、統合については生かしきれず、今後の課題である。
著者
中村 恵子 塚原 加寿子 伊豆 麻子 岩崎 保之 栗林 祐子 大森 悦子 佐藤 美幸 渡邉 文美 石崎 トモイ
出版者
新潟青陵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

養護教諭を対象とした質問紙調査を実施し、どのように養護診断・対応を行っているのかを明らかにした。養護教諭やスクールカウンセラー、生徒指導主事への面接調査を実施し、心の健康問題における連携について分析、記述を行った。スクールソーシャルワーカー(SSW)に面接調査を行い、SSWによる支援について明らかにした。また、養護教諭へのグループインタビューをもとに、保健室来室者記録の改善を図った。さらに、各関係機関を訪問し、連携について調査した。アセスメント・シートや情報提供書を作成するとともに、健康相談活動の進め方や体制づくり、関係機関との連携などについて、研究成果としてまとめた。
著者
佐藤 信枝
出版者
新潟青陵大学
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
no.1, pp.47-58, 2001

本研究では, 両職種が業務を協働する領域である身辺介護業務に焦点を当て, 両職種それぞれの周囲の人間関係に伴う社会的支援, 職場を離れた日常の生活苛立ち事, 職場環境での苛立ち事の実態を調査し, その構成要素と職種別の特性を明らかにすることを目的とした。調査対象の選定は, 1997年の国民衛生の動向から老年人口18.9%以上の都道府県, 施設規模が利用者数50名以上の100施設, 看護職と介護職を対象とした。年齢層, 職種経験年数などの特性, 身辺介護業務ストレスに影響する要因とソーシャルサポートとの関連を検討した。すべての年齢層で日常苛立ち事が職場環境苛立ち事に有意差があった。職場環境上で生じる心理的な影響を緩和していくためにはソーシャルサポートが必要である。生活出来事の多い20歳代には何らかの適切な社会的支援の必要性があることが示唆された。介護業務ストレス要因の因果関係では, ソーシャルサポートによって日常苛立ち事が緩和されているという結果であった。年齢層別比較では, 20歳代と同様に40歳代でも情緒的サポートや評価的サポートを必要としていたことからも, 今後は, サポートのタイプ別による介入方法の検討が必要となると考える。