著者
頓田 智美 諏訪 利明 小田桐 早苗 武井 祐子 門田 昌子 寺崎 正治
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.369-378, 2019

自閉スペクトラム症(ASD)児は,共同注意(joint attention)や関わり(engagement)といった対人相互性の発達プロセスに困難があることが先行研究から明らかになっている.本研究では,脳の可塑性が期待される発達早期に,ASD の疑いのある幼児(療育開始時1歳8か月,終了時1歳11か月)に対して対人相互性の発達を促す個別療育を実施し,対人相互性と適応状態の変化のプロセス及びその背景要因について検討した.個別療育は,児の特性や興味関心に即し,児が楽しんで参加できるように遊びの形で,原則週1回45分,全8回実施した.アセスメントにあたっては,新版 K 式発達検査2001,SPACE,Vineland- Ⅱ適応行動尺度を実施し,分析時には質的側面にも注目した.その結果, 新版 K 式発達検査2001による発達指数に変化は見られなかったが,要求,共同注意の回数,協応した相互的な関わりの時間が増え,遊びの内容が変化し,適応行動尺度による数値が上昇した.また, 各回の療育場面を詳細に検討することで対人相互性の変化のプロセスを想定し,その変化の要因として,療育者の玩具の選択及び示し方,療育者の関わり方,環境設定の3つの観点から整理した.