著者
飛田 礼子 千貫 祐子 野上 京子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.579-583, 2015-12-01 (Released:2016-03-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

36 歳,女性。カルボシステイン(SCMC),ジメモルファンリン酸塩服用開始数日後,背部,頚部,臀部の色素沈着に気付いた。SCMC の固定薬疹を疑い,薬剤リンパ球幼若化試験(DLST)を施行したところ陰性で,SCMC そのものの貼布試験も陰性であったが,SCMC の中間代謝産物であるチオジグリコール酸(TDA)の貼布試験は陽性反応であった。SCMC 内服試験にて,内服開始 3 日後に瘙痒を伴う紅斑の誘発がみられたことから,SCMC による固定薬疹と診断した。SCMC の固定薬疹では,発現機序に SCMC の中間代謝産物である TDA の関与が指摘されており,その診断においては TDA を用いた貼布試験が有用であるという複数の報告例がある。自験例でも TDA の貼布試験で陽性反応を認めたが,健常人での貼布試験でも同様に陽性反応を認めた。このため,SCMC による固定薬疹の診断における TDA 貼布試験の有用性を検討する目的で,自験例と健常人 5 名を対象として,種々の濃度に調整した TDA の貼布試験を行い,反応性を評価した。その結果,患者,健常人ともに濃度依存性に強い反応が認められ,TDA 水溶液の pH を確認したところ強酸であることが判明した。このことから,TDA の貼布試験による浸潤性紅斑は刺激反応である可能性があり,その判定には注意を要する。