270 0 0 0 Pork-cat syndrome

著者
千貫 祐子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.16-18, 2017-04-10

summaryPork-cat syndromeは獣肉アレルギーの一種で,原因抗原は豚の血清アルブミン(Sus s)であり,類似の構造を有するネコの血清アルブミン(Fel d 2)に経気道的に感作された後,交差反応によって豚肉摂取時にアレルギー症状を呈する疾患である.遅発性に発症する糖鎖α-Galが原因の獣肉アレルギーとは異なり,一般的に豚肉摂取30〜45分後に症状が出現するとされる.Pork-cat syndromeの診断には,問診と同時に,豚の血清アルブミン(Sus s)特異的IgEとネコの血清アルブミン(Fel d 2)特異的IgEの測定を行うことが有用である(保険未適用).保険適用の検査では,豚肉特異的IgEとネコ上皮特異的IgEを測定することで,ある程度推測できる.豚肉摂取後に蕁麻疹やアナフィラキシーを発症した患者を経験した場合は,ネコの飼育歴やネコとの接触の問診聴取が必要であり,豚肉やネコ(上皮やフケ)の特異的IgE検査を行う必要がある.
著者
原田 朋佳 山野 希 北尾 陸将 横山 大輔 増田 泰之 足立 厚子 嶋倉 邦嘉 千貫 祐子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.10, pp.2339-2350, 2022-09-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
21

獣肉アレルギー患者10例を対象に抗原検索を行い臨床的特徴をまとめた.方法:問診にて病歴,ペット飼育歴やマダニ咬傷歴,居住地を含む患者背景,臨床症状を確認し,プリックテストおよび抗原特異的IgE検査,ウエスタンブロット法による血清学的解析を行った.結果:10例中7例はgalactose-α-1, 3-galactoseによる獣肉アレルギー,2例はハムスターまたはネコ被毛に感作されたpork-cat syndrome,1例はコラーゲンを原因抗原とし,獣肉のみならず鶏や魚にも反応した稀な症例であった.
著者
千貫 祐子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.505-509, 2021-03-20 (Released:2021-03-20)
参考文献数
17

筆者らは,本邦における獣肉アレルギーの主要な原因抗原エピトープが米国からの報告と同様,糖鎖galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)であることをつきとめた.さらに,マダニ唾液腺中に糖鎖α-Galを証明し得たことにより,本邦における獣肉アレルギーの感作原因がマダニ咬傷であることが推察された.獣肉アレルギー患者は,交差反応のために,カレイ魚卵や抗悪性腫瘍薬のセツキシマブに対してもアナフィラキシーを発症する.後者では死亡例も発生しており,我々臨床医は,マダニ咬傷による糖鎖抗原感作から生じる多彩なアレルギーに留意しなければならない.
著者
千貫 祐子 高橋 仁 森田 栄伸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.615-618, 2013 (Released:2013-04-24)
参考文献数
9
被引用文献数
1

セツキシマブはEGFRを標的とするヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体で、本邦では大腸癌の治療薬として用いられている。近年、米国において、セツキシマブによるアナフィラキシーの原因がgalactose-α-1, 3-galactose (以下、α-galと略) に対する抗糖鎖抗体であることが報告され、これらの糖鎖がウシやブタやヒツジなどの哺乳類に豊富に存在するため、これらを摂取した時にもアナフィラキシーを生じることが報告された。筆者らの施設で経験した牛肉アレルギー患者についてセツキシマブ特異的IgEを測定したところ、いずれも高値を示し、牛肉特異的IgE値と相関関係が認められた。このことから、セツキシマブ投与前に牛肉特異的IgEを測定することによって、α-galが原因となるセツキシマブのアナフィラキシーを未然に防ぐことが出来る可能性がある。
著者
千貫祐子
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.48-55, 2017-12-15

筆者はこれまでに,本邦における獣肉アレルギーの主要な原因抗原エピトープが米国からの報告と同様,糖鎖galactose-α-1, 3-galactose(α-Gal)であることを報告した。α-Galが原因の獣肉アレルギー患者は,交差反応のために,抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵にもアレルギーを生じる。そして,マダニ唾液腺中にα-Galを証明したことにより,獣肉アレルギーの感作原因がマダニ咬傷であろうことが判明した。さらに,筆者は最近,飼い猫に感作され,交差反応のために豚肉アレルギーを発症したと思われるpork-cat syndromeの小児例を経験したので紹介する。
著者
森田 栄伸 高橋 仁 金子 栄 千貫 祐子 東儀 君子 髙垣 謙二 辻野 佳雄 三原 祐子 石飛 朋子 福代 新治 山田 義貴
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.607-615, 2014-12-01 (Released:2015-04-16)
参考文献数
11

島根県下 5 医療施設を受診した慢性蕁麻疹患者のうち,フェキソフェナジン塩酸塩の通常量 (120 mg/day) の服用にて効果不十分であった 24 例の患者を対象に,フェキソフェナジン塩酸塩の増量 (240 mg/day) 群 (フェキソフェナジン増量群:12 例) あるいはオロパタジン塩酸塩の通常量 (10 mg/day) への変更群 (オロパタジン変更群:12 例) の 2 群に無作為に割付,その後 4 週間の臨床症状を蕁麻疹重症度スコア,蕁麻疹活動性スコア,改変した蕁麻疹活動性スコア (modified Urticaria Activity Score : mUAS) により解析した。蕁麻疹重症度スコアは,フェキソフェナジン増量群では最終評価時に有意なスコア低下を認め,オロパタジン変更群では割付 4 週後および最終評価時に有意な低下を認めた。mUAS は,フェキソフェナジン増量群で 0∼1 週,2∼3 週,3∼4 週,最終評価時において有意な低下を認め,オロパタジン変更群で 1∼2 週においてのみ有意な低下を認めた。以上の結果からフェキソフェナジン通常量投与で効果不十分な慢性蕁麻疹に対してフェキソフェナジン倍量の増量投与は症状の改善に有効であり,さらにオロパタジン通常量への変更も効果はやや劣るものの有効であると結論した。フェキソフェナジンの倍量投与に要する費用の観点からは,抗ヒスタミン作用の高いオロパタジンへの変更も選択肢となり得ることが示唆される。(本論文は第 76巻4号〔2014年8月号〕p.p.372-380 に掲載されたものを一部訂正し,再掲載したものである。訂正箇所は下線にて表示している。)
著者
上野 彩夏 千貫 祐子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.407-409, 2022-10-01 (Released:2022-11-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

【背景】α-Gal syndrome は,マダニ咬傷によってマダニ唾液腺中の galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に感作された患者が,獣肉の α-Gal に対してアレルギーを発症する疾患である。α-Gal syndrome 患者は哺乳類肉の他,抗悪性腫瘍薬のセツキシマブやカレイ魚卵にもアレルギーを生じる。対処法として,感作原因であるマダニ咬傷回避の指導が重要である。【目的】マダニ咬傷回避の指導による α-Gal syndrome 患者の予後を解析する。【方法】α-Gal syndrome 患者 13 例(初診時年齢 38~81 歳,平均 66.8 歳,男性 8 例,女性 5 例)について,診断と同時にマダニ咬傷回避の指導を行い,その後定期的に牛肉特異的 IgE 値を測定し,臨床的予後を検討した。【結果】13 例中 9 例が,定期的な経過観察中に牛肉特異的 IgE 値が陰性化した(マダニ咬傷回避の指導開始から牛肉特異的 IgE 陰性化までの期間 11~78 カ月,平均 41.1 カ月)。このうち 5 例が獣肉全般の摂取が可能となり,2 例が豚肉のみ摂取可能となり,2 例が恐怖心から獣肉摂取を回避している。【結論】α-Gal syndrome はマダニ咬傷回避の指導によって多くが治り得る。ほとんどの患者がマダニ咬傷には気付いていないため,日常生活上の徹底的な回避の指導が重要と考える。
著者
千貫 祐子
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.419-424, 2018-10-01 (Released:2019-01-10)
参考文献数
30
被引用文献数
1

IgE 依存性即時型食物アレルギーの発症には二段階の免疫学的機序が関与する。まず,ある外来抗原に対して生体がこれをアレルゲンと認識すると,抗原特異的 IgE 抗体が産生され,組織中のマスト細胞あるいは末梢血中の好塩基球の表面に高親和性 IgE 受容体(FcεRI)を介して結合する(感作成立)。次いで,同じ抗原あるいは交差反応性を持つ抗原が侵入すると,細胞表面に結合した抗原特異的 IgE が架橋され,ヒスタミンなどの化学伝達物質が遊離され,蕁麻疹やアナフィラキシーが生じる(症状誘発)。これまで長らく,食物アレルギー発症における感作成立は,主に経口摂取した食物に対して経腸管的に生じると考えられてきた。ところが近年,本邦で生じた加水分解コムギ含有石鹸の使用による小麦アレルギー発症の事例を契機に,食物アレルギー発症における経皮・経粘膜感作の重要性が注目されることとなった。
著者
山田 早紀 松原 康策 千貫 祐子 堀 雅之 正木 太朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.1141-1147, 2019 (Released:2019-11-12)
参考文献数
18
被引用文献数
1

症例は6歳,女児.豚肉摂取後に全身の掻痒感や蕁麻疹が反復して来院した.住環境は自宅1階が獣医の両親が開業する動物病院で,犬を飼っている.抗原特異的IgEはネコ皮屑,イヌ皮屑,豚肉,Sus s 1,Fel d 2,Canf 1,Can f 2,Can f 3が高値(≥50UA/ml),プリックテストは生の豚肉と牛肉が陽性であった.患者血清IgEを使用したWestern blottingで豚肉とネコ被毛上皮抽出物中の同じ分子量(67kDa)の蛋白に結合を認め,阻害試験で交差反応が確認されたことを基にpork-cat syndromeと診断した.更に豚肉とイヌ被毛上皮抽出物にも交差反応が確認され,感作にネコとイヌ両者の関与が示唆された.食肉は十分に加熱し摂取することを指導し以後日常生活に支障はない.本症候群は感作から交差反応に数年以上を要するため思春期から若年成人発症例が多く,本例は調べ得た限り英文誌・和文誌の既報中最も若年発症であった.本症候群はペット動物-食肉アレルギー症候群の名称が病態を理解しやすい.
著者
千貫 祐子 森田 栄伸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.8-11, 2012-04-10

要約 近年,旧「茶のしずく石鹸」中の加水分解小麦(グルパール19S®)で経皮または経粘膜感作されて,小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)を発症したと思われる患者が急増した.患者の多くが小麦によるFDEIAの主要アレルゲンであるω-5グリアジンに対する特異的IgEを有しておらず,従来のFDEIAとは異なる臨床症状および予後を呈している.
著者
飛田 礼子 千貫 祐子 野上 京子 森田 栄伸
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.579-583, 2015-12-01 (Released:2016-03-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

36 歳,女性。カルボシステイン(SCMC),ジメモルファンリン酸塩服用開始数日後,背部,頚部,臀部の色素沈着に気付いた。SCMC の固定薬疹を疑い,薬剤リンパ球幼若化試験(DLST)を施行したところ陰性で,SCMC そのものの貼布試験も陰性であったが,SCMC の中間代謝産物であるチオジグリコール酸(TDA)の貼布試験は陽性反応であった。SCMC 内服試験にて,内服開始 3 日後に瘙痒を伴う紅斑の誘発がみられたことから,SCMC による固定薬疹と診断した。SCMC の固定薬疹では,発現機序に SCMC の中間代謝産物である TDA の関与が指摘されており,その診断においては TDA を用いた貼布試験が有用であるという複数の報告例がある。自験例でも TDA の貼布試験で陽性反応を認めたが,健常人での貼布試験でも同様に陽性反応を認めた。このため,SCMC による固定薬疹の診断における TDA 貼布試験の有用性を検討する目的で,自験例と健常人 5 名を対象として,種々の濃度に調整した TDA の貼布試験を行い,反応性を評価した。その結果,患者,健常人ともに濃度依存性に強い反応が認められ,TDA 水溶液の pH を確認したところ強酸であることが判明した。このことから,TDA の貼布試験による浸潤性紅斑は刺激反応である可能性があり,その判定には注意を要する。