著者
伊藤 美保 飯田 奈美子 南谷 かおり 中村 安秀
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.387-394, 2012-12-20 (Released:2013-01-24)
参考文献数
22

目的本研究は、医療通訳を実施している当事者に対して質問紙調査を行い、医療通訳業務や研修の内容、医療通訳の現場での課題などを明らかにすることを目的とした。方法通訳者を派遣しているNPO、地域の国際化協会や、通訳者を雇用している医療機関等に通訳者への配布を依頼し、郵送にて直接回収し分析した。結果有効回答数は284名(有効回答率33.4%)であった。5年以上の経験者が46.1%いたが、常勤の通訳者は少なく、76.4%が派遣の形態をとっていた。対応言語は、手話を含む14言語であった。通訳頻度が月4回以下のものが68.3%であったが、8.5%は月20回以上の医療通訳の機会があった。回答者の54.4%が総時間20時間以上の研修を受けていた。医療従事者と患者の間に位置する通訳者として、種々の困難さに直面している実態が明らかになった。考察医療通訳者を直接対象とした本調査により、すでに多くの医療通訳者が現場で活動している実態が明らかとなった。研修を受ける機会が少なく、通訳技術の維持向上に必要不可欠な研修体制の充実が必要であった。医療従事者側と患者側の双方に、通訳者の効果的な活用方法と公平性という業務範囲を明確に説明し、同時に通訳者を精神的にも支える立場のコーディネーターが必要である。