著者
野下浩平 飯田 崇仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.708-713, 2002-03-15

本論文は,ゲームにおける解手順の定義を一般化し,その応用としてある形の詰将棋問題をすべて数え上げた結果を示す.この問題は,$3?times 3$ の矩形の中に玉のほか金と銀の8枚を配置した「金銀図式」である.これは,詰将棋の専門家によって長年数え上げの対象として研究されてきたが,その完成にはほど遠い状態にあった.ここで提示した方法に基づいて数え上げを実行し,その結果,詰手数の長い問題を含む多くの新しい問題を発見することができた.ここで最も難しい点として,解手順の標準的な定義を用いると,人間(専門家)がほぼ正しいと認める問題が数え上げの中で捨てられることがある.そこで,解手順の定義を一般化して,軽微な不完全さを持つ問題も許すようにする.金銀図式の数え上げは次のように進む.将棋盤で可能な28個の位置における問題図をすべて数え上げる.その中から王手でない図,玉が詰む図を選択し,さらにその中から,別解(余詰)のないという意味で完全な図を求める.最後に,完全でない図の中から,不完全さが軽微な問題で,専門家が正しいと見なすようなものを選ぶ.