著者
飯田 貞雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.62-75, 1974

本研究は、筆者の助言のもとに試みられた一小学校におけるresource-room方式による軽度精神薄弱児および学業遅滞児指導の実践の効果を検討しようとしたものである。方法は2群比較対照法と事例研究法を併用した。対象児として、通級児群9名(resource-roomに通級し、1年間特別指導を受けた小学校1年在学の該当児)と対照児群10名(通級児とほぼ同質であるが、特別指導を受けないもの)を選び、知能検査(3回施行)、2種の学力検査(2回施行)、ソシオメトリックテスト、通知票等を用いて評価を行なった。また、事例研究にあたっては生育歴、学校における諸記録などの資料の提供をうけた。結果の概要は次のとおりである。1. 1年間におけるIQの変動をみると、通級児では、全員がその差+5以上の上昇を示した。また、群としてみた場合には、通級児群の平均IQは大きく変化して、その差は+15.1であった。これに対して、対照児群の方にはほとんど変化はみられなかった。2.学力面については、言語テストの結果において、通級児群の方がより大きな進歩を示した。3.社会的適応の状況は、両群ともに、孤立児が目立つが、一方の教育組織が部分的分離であるにもかかわらず、両群間にはほとんど差はみられない。4.事例研究を通しては、通級児の2名がその後好転を示し、中途から通級指導不要となったことが確められた。以上を総括すると、今回の評価期間はわずか1年を満たないものであったが、本実践の効果をわれわれはここに認めることができよう。また、本研究をとおして、実践活動に対するいくつかの重要な示唆が得られた。なお、今後の継続的かつ包括的な研究にまたなければ明確な傾向を得ることができない点も多く残されている。