著者
登張真稲 名尾典子 首藤敏元 大山智子
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

【問題と目的】 登張・名尾・首藤・大山(印刷中)は教師が生徒の協調性を評定できる尺度等を含む質問紙を作成し,小学校,中学校,高校の教師計96名に回答を求めた。この質問紙では教師たちに,「子どもたちをどのように育てたいと思うか」についても聞いている。本研究では,この質問への教師の回答について報告する。「協調的な人に育てたい」という期待が,他の期待と比較し,相対的にどのぐらい大きいかということについても検討する。【方法】研究対象:小学校教師61名,中学校教師21名,高校教師14名,計96名(男性50名,女性46名;20代~60代)質問内容:「子どもたちをどのように育てたいと思うか,どのような人になってもらいたいと思うか,お聞きします」という設問に対して,「自分の意見をしっかり主張できる人」等の15項目の中から,5つまで選ぶことを求めた。この15項目は,研究者4名で相談して,学校の教師が生徒に期待すると思われる項目として考案したものである。調査:2013年7月に小学校教師17名に,2013年8月に小学校教師44名,中学教師21名,高校教師14名,計79名に質問紙への回答を求めた。【結果と考察】 「子どもたちをどのように育てたいと思うか」という設問に対する15項目のそれぞれについて,小学校教師,中学校教師,高校教師,小学校+中学校+高校の各群で選択された比率を,多い順にTable 1に示した。 最も多く選択されたのは,「相手の気持ちを考えて行動する人」であった。「協調性の高い人」を最も良く表しているのは「いろいろな人と協調・協力できる人」であるが,この項目の選択は中高の教師では比較的高いものの、小学校教師では30%未満であり、中学生以上で特に期待される特性であることが示唆された。「相手の気持ちを考えて行動する人」「良い人間関係を築ける人」「道徳や規則をしっかり守る人」「人のために行動できる人」「人に迷惑をかけない人」「他人に対して寛容な人」も協調性の高い人に含めることが可能とも考えられるので、そうした回答を含めると、協調性を求める回答は多いと言える。協調性以外の特性で,多く選択されたのは,「夢を持ち夢の実現に向けて努力する人」,「自分の意見をしっかり主張できる人」等である。「自分に厳しい人」「自分を犠牲にして他者を助けることができる人」は優先順位が低かったと言える。 「自分らしさを大事にする人」は小学校教師で,「人のために行動できる人」「難しい問題にも恐れず立ち向かう人」は中学校教師で,「謙虚な人」は高校教師で相対的に多い傾向が見られた。 特に中学教師と高校教師の人数が少なかったため,この結果が常に再現されるかどうかは不明であるが,教師が生徒をどのように育てたいと思うかということが少し明らかになった。Table 1 「子どもたちをどのように育てたいか」という設問に対する選択の比率(5つまで)(%)【引用文献】 登張・名尾・首藤・大山 (印刷中) 日本心理学会第78回大会論文集