著者
福岡 裕美子 駒井 裕子 林 成蔚
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.57-63, 2016-03-18

社会的なつながりがほとんどない中高年化したニートを支える高齢の親の心配事を高齢者ケアに携わる専門職への実態調査から把握することを目的とした。S市社会福祉協議会が運営する介護保険サービス事業所で働くケアワーカーを対象にアンケート調査を実施した。調査期間は平成27年1月末から2月末。調査対象者数は146名。アンケート調査の内容は、①65歳以上の親(両親あるいは父親あるいは母親)と中高年化したニートが同居しているケースの担当の有無、②担当ケース数、③担当ケースの概要(自由記載)、④65歳以上の親の心配事(自由記載)の自記式質問紙にて実施した。倫理的配慮は、ケアワーカーが所属する事業所長への同意を得て、各ケアワーカーへのアンケート調査は回収をもって同意とみなした。倫理申請はT 大学研究倫理審査の承認を得た。アンケート調査の結果は、ここ1年で中高年化したニートがいるお宅を担当したことがあるケアワーカーは32名(43.8%)だった。担当ケースの概要が記載されていたのは23件だった。自由記載の内容は意味内容を変えずに1文節化してコード化し類似性のあるものにまとめた。その結果、親の心配事の内容は【親の年金に依存した生活】【ニートの病気の心配】【心理的負担感】【親の死後の生活の心配】【親戚への負い目】【親の過剰な保護】【助けてもらえる存在】【日常生活の不自由さ】というカテゴリに分類された。ケース概要の中にはニートから受けた相談の内容も含まれていた。内容は【親の介護の負担】【生活費の工面】というカテゴリに分類された。親以外の家族からの相談内容は【妹の行く末の心配】というカテゴリに分類された。ニートを支える高齢の親の心配事を把握することができた。また、親の心配事に関する調査であったが、ニート本人から受けた相談の内容も含まれていた。その内容から、親の介護のために離職し、そのまま社会との接点を失ってしまったケースがほとんどであると推察された。