著者
新川 敏光 安 周永 林 成蔚
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、日本の民進党(旧民主党)を韓国の「ともに民主党」、台湾の「民主進歩党」と比較研究することによって、日本におけるリベラル勢力の低迷の理由と再生の可能性を明らかにすることである。欧米との比較の視点から、日韓台のリベラル政党の歴史と政権期の政策を比較検討する。それによって、三カ国のリベラル政党がおかれている共通点と相違点を明らかにする。具体的には、5月にヨーロッパの社会民主主義に関する研究者を招聘し、研究会を行う。その際に、研究メンバー間に今後の研究計画を再確認するとともに、本研究計画に対してヨーロッパ研究者から助言を得て、今後の課題と方針を一層明確にする。8月には韓国調査を行う予定であった。初年度は、当初の研究計画以上の成果を得ることができた。5月に研究代表と分担者が集まり、日韓台のそれぞれの政治状況を報告してもらい、本科研の計画を明確にした。また7月には、一橋大学の田中拓道教授を、2月には法政大学の山口二郎教授を招聘し、研究会を行った。欧米の社会民主主義の動向と日本の野党再編を把握することができた。計画当初は今年度に韓国の調査を行う予定であったが、去年の北朝鮮のミサイル実験等の情勢を踏まえ、韓国調査を中止し、2年目に行う予定の台湾調査を先に行った。訪問先は、台湾総統府のスポークスパーソンや次長、台湾日本関係協会の会長、民進党の幹事長、時代力量の創立メンバー等であった。こうしたインタビューから民進党政権の復権には、国民党の腐敗だけではなく、対中関係をうまく利用した民進党の戦略と市民運動の影響があった。東アジアにおいても政党の対立軸とリベラル政党の戦略が大きく異なっているが確認できた。
著者
福岡 裕美子 駒井 裕子 林 成蔚
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.57-63, 2016-03-18

社会的なつながりがほとんどない中高年化したニートを支える高齢の親の心配事を高齢者ケアに携わる専門職への実態調査から把握することを目的とした。S市社会福祉協議会が運営する介護保険サービス事業所で働くケアワーカーを対象にアンケート調査を実施した。調査期間は平成27年1月末から2月末。調査対象者数は146名。アンケート調査の内容は、①65歳以上の親(両親あるいは父親あるいは母親)と中高年化したニートが同居しているケースの担当の有無、②担当ケース数、③担当ケースの概要(自由記載)、④65歳以上の親の心配事(自由記載)の自記式質問紙にて実施した。倫理的配慮は、ケアワーカーが所属する事業所長への同意を得て、各ケアワーカーへのアンケート調査は回収をもって同意とみなした。倫理申請はT 大学研究倫理審査の承認を得た。アンケート調査の結果は、ここ1年で中高年化したニートがいるお宅を担当したことがあるケアワーカーは32名(43.8%)だった。担当ケースの概要が記載されていたのは23件だった。自由記載の内容は意味内容を変えずに1文節化してコード化し類似性のあるものにまとめた。その結果、親の心配事の内容は【親の年金に依存した生活】【ニートの病気の心配】【心理的負担感】【親の死後の生活の心配】【親戚への負い目】【親の過剰な保護】【助けてもらえる存在】【日常生活の不自由さ】というカテゴリに分類された。ケース概要の中にはニートから受けた相談の内容も含まれていた。内容は【親の介護の負担】【生活費の工面】というカテゴリに分類された。親以外の家族からの相談内容は【妹の行く末の心配】というカテゴリに分類された。ニートを支える高齢の親の心配事を把握することができた。また、親の心配事に関する調査であったが、ニート本人から受けた相談の内容も含まれていた。その内容から、親の介護のために離職し、そのまま社会との接点を失ってしまったケースがほとんどであると推察された。
著者
宮脇 淳 石井 吉春 遠藤 乾 山崎 幹根 林 成蔚 木村 真 若松 邦弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

台湾の直轄市制度の拡充に伴う政府間財政調整制度改革の政策議論、韓国の広域市制度の展開、欧州の財政危機問題に伴う財政と政治の理論的関係等について合意形成にまで掘り下げた比較研究を行い、その成果を日本の地方分権議論に反映させる調査研究を行った。とくに、台湾の直轄市制度に関する調査研究は、日本の大都市制度議論、財政調整制度のあり方、そして閣議意思決定との関係について新たな視野を形成した。