著者
駒澤 利雄
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
醸造學雜誌
巻号頁・発行日
vol.9, no.8, pp.588-599, 1931-08-15

豪州産シバリー種本邦普通大麦より製造せる麦芽につき糖化及醗酵試験並に之より仕込みたる麦汁が酵母の生理的性質に及ぼす影響を見、之とゴールデンメロン種大麦より製造せる麦芽とを比較したるにエキス分生成量に於てシバリーはゴールデンメロンに劣り六角大麦は更にシバリーに劣ることを観察せし以外には殊に品種的差異としてシバリー種及普通大麦が麦酒製造上著しくゴールデンメロン種と異なるが如き所なく唯共試シバリー麦芽中醗酵やや不良のものありたれどこは品種的原因に基づくに非ずして寧ろ製麦操作上溶化(Auflosung)不良なるに歸すべく此点に注意して製麦すればシバリー種及六角普通麦よりもゴールデンメロン種と大差なき麦芽を得ることを確かめたり。但し麦酒の味、泡持又は所謂グルチン〓濁等に就ては本試験の關知せざる所とす。之に就ては別に研究施行中なり。(1931年7月日本麦酒鑛泉株式会社東京工場)終りに臨み當社松山技師長(茂助)の懇切なる御指導と大平技師(走快)及榊原友吉氏の御援助とを深謝す。