著者
高 春玲
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.73-93, 2013-03-30

本稿では『おくのほそ道』の平泉の章に於いて、杜甫の『春望』を踏まえている「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」の諸外国語への翻訳文を比較し分析した。『おくのほそ道』の野坡本、曾良本、柿衞本及び西村本、これらの四つの原本を分析し、野坡本の「城春にして青〻たり」から柿衞本の「城春にして草青みたり」に至る補筆訂正は、芭蕉が句文の推敲を重ね、内容・表現上の様々な工夫をこらしたものであることを確認した。『春望』についての解釈を調べたところ、東洋の自然観が中国と日本の場合に、違いがあることが判明した。『春望』の「草木深し」を芭蕉が「草青みたり」に換えたことによって、『春望』の「詩的表現」は変わった。「城春にして草青みたり」の「草青みたり」についての先行研究の論点をまとめ、「草青みたり」の意味について考察した。