著者
湯浅 貴行
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.65-83, 2016-03-31

本研究の目的は、日本人英語学習者があるテキストを読み、そのテキストのどれくらいの割合の語彙を知っていればどれくらい理解できるのかを調査することである。テキストに知らない語が多ければ多いほど、理解の程度も低くなる。この考えを前提としたものがカバー率研究である。多くの先行研究は、未知語の推測や適切な読解を得るためには、テキスト内の98%の単語を知っている必要があると主張している。(Hu & Nation, 2000; Laufer, 2011; Schmitt, Jang, & Grabe, 2011)。しかし、1 語の定義にワードファミリーを使用している点と読解の測定に従来の多肢選択式テストなどを用いていて再生テストが用いられていない点に問題があり、この2 点の問題を改善し、本研究は読解とカバー率の関係を調査した。
著者
杉浦 滋子 Shigeko Sugiura
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.33-53, 2012-03

日本語で比況、例示、推量の用法をもつ「~みたいだ」は「~を見たようだ」が文法化した形式である。先行研究はその過程での形式が変化したこと、及び名詞以外の品詞の語に付くようになったことを指摘しているが、用法の広がりとして捉えるべきであること、用法の広がりにおいて意味の再解釈があることを指摘した。
著者
竹中 信介
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-151, 2014-03-31

「三種の神器」とは、日本神話に登場し、日本皇室に伝わる三種の宝物(「八咫鏡」「草薙剣」「八尺瓊勾玉」)のことである。「三種の神器」を構成する「鏡」「剣」「玉」の象徴的意味は、皇位継承のシンボルとしての役割ほど広く一般的に認知されていない。わが国では、歴史上、「三種の神器」の解釈論はいくつか存在するが、その中で展開されたのは主として天皇論との関わりにおける解釈であったものの、その解釈には単なる皇位継承のシンボルというだけでなく、その解釈者の宗教的、思想的背景を反映して形而上学的な多様性が認められる。さらに、本論では神道以外の諸宗教(仏教・道教・キリスト教)や文明圏(遼河文明)にも目を向け、シンボルとしての「鏡」「剣」「玉」に備わる多義性にも注目し、「三種の神器」の象徴的意味を比較文明・文化的視点から検討する。
著者
杉浦 滋子
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-27, 2015-03-31

『NHK 全国方言資料』第1-6 巻のデータの分析により、推量形に終助詞ガがつく場合の用法、断定形に終助詞ガがつく場合の用法を記述し、後者は前者から派生したと主張した。また、断定形にガがつく用例がある地点を地図化し、その結果から、断定形につくガはかつてより広く分布していたが、優勢な地域で他の終助詞が用いられることによって分布が狭くなったと考えられる。
著者
中島 慧
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-64, 2016-03-31

仙人とは捉えどころのない言葉である。神や仏と同様に超越的な存在を表す言葉ではあるが、神や仏に比べ、その範疇は曖昧で定義し難い言葉である。中国において仙人は道教と深く結びついた存在である。しかし、仙人は道教の定着していない日本においても身近な存在である。但し、中国と日本では同じ仙人という言葉を使ってはいても、その言葉が指し示す存在は同じであるとは限らない。中国と日本では異なった仙人像が形成されている。
著者
高本 香織
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-45, 2015-03-31

平成20 年に経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者・介護福祉士候補者の受け入れが始まり、日本で働く外国人ケアワーカーの存在が学術的・社会的関心を集めている。本稿では異文化間ケア先進国であるアメリカの事例を中心に、海外で働く外国人看護師を対象とした異文化適応研究を調査した。その結果、受け入れ国や看護師の出身国・言語・人種に関わらず、異文化間ケアの現場における看護師の適応プロセスには共通の課題が存在することが改めて確認できた。なかでも言語とコミュニケーション(非言語コミュニケーションも含む)は最も重要な課題であった。さらに、看護師に期待される仕事、そして患者や患者家族のあり方といった異文化間ケアの現場における看護のあり方の文化的差異も課題であることがわかった。今後の研究においては、受け入れ国の文化と出身国の文化に特有の事例や現象について理解を深めることも重要であることが示唆された。
著者
ワチャラチャイ コーブルアン
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.33-59, 2017-03

本研究は、物語ナラティブにおいて、タイ語の関係節がどのように使用されているかを明らかにするため、タイ語の物語で使用された関係節を収集し、構造的および機能的に調査した。高橋(2011)による、「thîi 関係節」「sʉ̂ŋ 関係節」「裸の関係節」という3 つの関係節化形式の分類で分析した結果、タイ語の関係節は、各形式の統語的パターン、および使用される機能の傾向がわかった。「sʉ̂ŋ 関係節」と「裸の関係節」は主名詞が修飾節の主語という決まったパターンで使用されていたが、それに対して、「thîi 関係節」は修飾節の中で主名詞の統語上の位置は様々なパターンでもっとも生産的に用いられ、そして、「限定的用法」も「非限定的用法」もあり、益岡(1995)が指摘する、修飾節と主節の意味的な関係の用法もみられた。
著者
竹中 信介
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-151, 2014-03

「三種の神器」とは、日本神話に登場し、日本皇室に伝わる三種の宝物(「八咫鏡」「草薙剣」「八尺瓊勾玉」)のことである。「三種の神器」を構成する「鏡」「剣」「玉」の象徴的意味は、皇位継承のシンボルとしての役割ほど広く一般的に認知されていない。わが国では、歴史上、「三種の神器」の解釈論はいくつか存在するが、その中で展開されたのは主として天皇論との関わりにおける解釈であったものの、その解釈には単なる皇位継承のシンボルというだけでなく、その解釈者の宗教的、思想的背景を反映して形而上学的な多様性が認められる。さらに、本論では神道以外の諸宗教(仏教・道教・キリスト教)や文明圏(遼河文明)にも目を向け、シンボルとしての「鏡」「剣」「玉」に備わる多義性にも注目し、「三種の神器」の象徴的意味を比較文明・文化的視点から検討する。
著者
杉浦 滋子
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-20, 2017-03-31

本稿では自由発話のデータベースである『全国方言データベース 日本のふるさとことば集成』を講演、職場での会話と比較して、「エ(ー)」「エ(ー)ト」の比率が低く、「マ」の比率が高いことから、これらが自由発話という談話タイプの特徴だとした。さらに、フィラーにどのような方言的差異が見られたか述べた。また、フィラーには語彙形式由来のものがあるが、一部方言には共通語に見られない「見よ」という意味の語彙形式がフィラーとなっていること、一部方言で「ほら」にあたる形式と二人称代名詞が音韻的な独立性を失って助詞化していることを指摘し、後者はまずフィラーとなってから助詞化したと主張した。
著者
大野 仁美
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.153-159, 2014-03

日本語において文末に置かれる「ダ」が述語名詞句に後続しており、その主語となる名詞句が存在する場合、「ダ」はコピュラであると解釈されうる。しかし文中にはNPが1つしかない場合も、またNP が2つあってもそれらが主語と述語の関係になっていない場合もある。後者のような例としてよく知られているものにいわゆる「ウナギ文」があるが、その解釈をめぐっては省略や分裂文といった文の情報構造の分析が大きく関与する。本稿では「ダ」が省略などの情報構造上の現象と深く関わりをもつことを示したのちに、コピュラそのものが焦点マーカーと解釈される言語の例をあげ、日本語の「ダ」そのものはどの程度あるいはどのように情報構造と関わりを持つと考えられるのか問題を提起する。
著者
丁 奕春 黒須 里美
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.137-155, 2013-03-30

中国都市における女性の晩婚化について統計とメディアからの情報を整理し、上海においてインタビュー調査を実施することから、結婚難の実態とその要因を探った。「80 后」世代の結婚は女性自身の高学歴化と高収入化により結婚に対する理想が高くなったことや、結婚式と新居を含めた結婚コストの上昇が大きく影響している。さらに一人っ子第一世代として、親との絆が強い分、親の結婚への干渉も大きい。中国特有の歴史文化的経緯があるものの、都市の女性の結婚難の実態は東アジアや日本の状況とも共通点が多い。
著者
秋本 瞳
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-41, 2016-03

音声言語と話しことば、文字言語と書きことばとのずれを示すために、現代日本語書きことば均衡コーパス(BCCWJ)、及び日本語話し言葉コーパス(CSJ)を用い、チョット/スコシ、ヨ/ネの出現頻度から各ジャンルの特徴を考察した。その結果、チョット・スコシ、ヨ・ネの出現比率と、チョット・スコシのクラスター分析の結果から、BCCWJとCSJ の各ジャンルは、文字言語と音声言語といった基準によって分類できることがわかった。一方で、チョットとスコシ、ヨとネをそれぞれ総合した形、あるいは対立させた形でジャンルごとにみると、話しことば的、あるいは書きことば的な特徴の有無による分類等が考えられることが明らかになった。以上のことから、本稿では、音声言語/文字言語という枠組みではない、各ジャンルのテキストの文体的位置づけが行われ得ることを示唆した。
著者
里永 雄一朗
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 = Language & Civilization (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.113-136, 2013-03-30

仏教は一般に普遍的宗教あるいは世界宗教とみなされているが、それが発祥地のインドから世界各地に伝播し土着する過程において、その地域固有の特質をもつにいたったことは周知の事実である。それはそれぞれの地域で普及した仏教思想における自然観にも生きており、インドの「原始仏教」ならびに「如来蔵系経典」においては「ダルマ中心」的自然観、中国の「非情成仏論」においては「衆生中心」的自然観、そして日本の「草木成仏論」においては「自然中心」的自然観が見出せるのである。「自然」との一体性をもち、その心情を重視するような主観的感性を尊ぶ日本人の自然観は、宇宙の原理や法則などを追求しようとする「原始仏教」の「ダルマ中心」的発想をどのように変容させたのであろうか。仏教思想に見るインドと日本の自然観との比較文化的考察を中心とし、特に日本の「草木成仏論」の成立に至る思想的流れを中国の「非情成仏論」にも触れながら追ってみたい 。