著者
高 永煥 四方 卓磨 中嶋 敏宏 三宅 宗隆 林 鐘声
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.987-993, 1989-08-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
11

近年,ウイルス性心筋炎後に拡張型心筋症病態を呈する症例が散見される.今回,うっ血性心不全として発症し,拡張型心筋症様病態を呈するも,2年後には改善し,その約5年後に再びうっ血性心不全の型で発症した再発性ウイルス性心筋炎と思われる症例を経験し,ウイルス性心筋炎と拡張型心筋症の関連について考える上で,興味ある症例と思われ報告する.症例は18歳,男性10歳時,感冒症状を前駆症状としてうっ血性心不全の型で発症.心エコー上著明な左室腔の拡大と左室駆出率の低下を認めた.心不全症状改善後の左心機能の低下は続き,発症後3カ月目に行った右室心内膜心筋生検では著明な間質の線維化を認めた.また,ペア血清にて,コクサッキーB4ウイルスの有意の上昇を認めた.2年後,左心機能は回復,順調に経過していたが,約5年後(昭和62年4月)再び感冒症状を前駆症状として,うっ血性心不全の型で発症.前回同様著明な左室腔の拡大,左室駆出率の低下を認めた.右室心内膜心筋生検ではリンパ球の浸潤が主体で,問質の線維化は軽度であった.左心機能の回復は緩徐であったが,徐々に回復し,1年2カ月後の現在,左室駆出率の軽度の低下を残すのみとなった.免疫学的には,OKT 8の低下,OKT 4/OKT 8の上昇を認めた.