著者
高下 大地
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.125, 2016

<p>【目的】</p><p>全国的にも、高次脳機能障害者の自動車運転再開に対しては注目されており、当院でも再開を希望する対象者が多く、方向性に難渋することがあった。そのため、高次脳機能障害者の自動車運転再開に対しての当院でのプロトコール作成に取り組んだので、その過程・成果を発表する。</p><p>【方法】</p><p>文献レビュー・学会への参加を実施した。その内容を踏まえ、自動車運転を取り巻く法律・自動車運転再開に必要な高次脳機能についての勉強会を実施し、知識の共有を行った。当院では、ドライブシュミレーター(以下DS)・実車評価もできる環境もなく、評価用紙・フローチャートの作成までを行い、その後の方向性の検討に役立てる事とした。評価では、基準値を決め、適性あり・境界域・適性なしに分ける事とした。スクリーニング(MMSE・TMTA B・Rey複雑図形・三宅式記銘力検査・FAB)評価から、DRと相談し、適正あり・境界域の方に対しては、精査(CAT・BADS・WMNR・WAISⅢ)を行い、その後の方向性を検討する事とした。実際に運用し、データ収集を開始した。</p><p>【結果】</p><p>運用開始後、適応のある方に関してはスムーズに評価に取り組めるようになり、主治医・リハビリ間(PT・OT・ST)・家族とのコミュニケーション量が増え、方向性についてより具体的な話ができるようになった。それにより、入院早期からGOALを明確にした、リハビリテーション(以下リハビリ)を提供する事が出来るようになった。</p><p>しかし、自動車運転再開の是非に捉われ、高次脳機能評価を実施しての全体像を把握するという視点が疎かになる事があり、話し合いを行い、高次脳機能障害を捉えての全体像を把握する事が第一の目的である事を確認した。急性期では、日に日に状態の変化が大きく変わる事もあり、その上で評価を行い、基準値を基に医師と話し合い行い、医師に判断してもらう事とした。</p><p>方向性に関しては、精査後の境界域の方に対して、一定期間後外来で再評価する事とし、そこで適性があった場合は、外部のDS・実車評価が行える病院へ繋げる事とした。</p><p>【考察】</p><p>評価用紙の作成では全国的にも境界点が曖昧な所があり、実際に運用する中で、基準点の設定に難渋した。そのため、高次脳機能障害者の自動車運転再開に関しての実際の是非の判断に関しては、DRに判断してもらうというスタンスを当院では行った。実際に運用していく中で、早期からの方向性・各職種のアプローチ内容が明確化され、スムーズに次の方向性が検討できるようになったと考える。</p><p>【まとめ】</p><p>高次脳機能障害者の自動車運転再開に関して、実際に、整備を行うことで、評価の必要な対象者に対して、スムーズに早い段階で評価ができるようになり、方向性に関しても主治医と話す事ができるようになった。シュミレーター・実車評価が行える環境にない当院でも、早い段階で評価を行うことで、その後の方向性の明確化ができるようになった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究の計画立案に際し,事前に健和会 大手町病院の倫理審査員会の承認を得た。</p>