著者
高久 洋暁
出版者
新潟薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

酵母Candida maltosaは蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CYH)に対し、生育の一時停止後に再び生育が回復する誘導的耐性を示す。これは、CYH添加後、転写活性化因子C-Gcn4pが、CYH耐性L41リボソーム蛋白質遺伝子(L41-Q)の転写を誘導し、CYH耐性型リボソームが合成されることに起因する。CYH添加後及びヒスチジン飢餓を誘導する3-AT添加後の転写活性化因子C-Gcn4pの制御をmRNA、蛋白質レベルにおいて解析するため、GFP又はHAタグと融合したC-Gcn4pの検出を試みたが、十分に解析できるレベルのものは構築できなかった。そこでFLAGタグ融合型C-Gcn4pを用いたところ、機能も相補、検出感度も解析に十分であった。FLAGタグ融合型C-GCN4をC-GCN4破壊株に導入し、3-AT或いはCYH添加後のC-GCN4mRNA、蛋白質レベルの解析を行った。3-AT添加後、C-GCN4mRNA量の上昇率以上にC-Gcn4p量の上昇率が大きかったので、転写、翻訳段階における制御、特に翻訳制御が大きく寄与していることが示唆された。CYH添加1時間後、C-GCN4 mRNA量は一時的に大きく上昇するが、逆にC-Gcn4p量は減少した。その後、C-GCN4mRNA量は減少するが、逆にC-Gcn4p量は増加し、CYH添加前の約1.5倍まで上昇し、一定となった。すなわち、CYHによるmRNAの安定化で一時的にRNA量は上昇するが、CYH添加直後の蛋白質合成は厳しく抑制されるためにC-Gcn4p量は減少したと考えられた。その後、C-Gcn4pの上昇ともにL41-Q転写誘導が促進されたが、C-Gcn4p量が一定量になったにもかかわらず、転写誘導効率がその後数時間上昇し続けたことから、C-Cpc2pなどのC-Gcn4p活性調節因子の関与の可能性が考えられた。